捻挫の初期対応 ー怪我したらまずして欲しいことー

コラム
これだけは知っててRICE療法
-これをするしないでは回復に大きな差が出ます-

はじめに

「足をひねった」「くじいた」ことで起こる、いわゆる“捻挫”は、日常でもスポーツでも起こりやすいけがです。

けがをした瞬間は、「歩けるかな?どうしたらいいんだろう?」と不安でいっぱいになると思います。

捻挫は、けが直後の正しい手当てが“治りの速さ”と“再発予防”に大きく影響します。

「いろいろ難しいことを覚えないと…」と身構えてしまうかもしれませんが、心配はいりません。

まずやってほしいことは、とてもシンプルです。

最新ガイドラインでも、初期の適切な保護と段階的な機能回復の重要性が示されています。

正しく対応して、一緒に復帰までの最短ルートを歩きましょう。

RICE療法とは?

RICE療法とは初期対応に必要な処置(Rest:安静Ice:冷却Compression:圧迫Elevation:挙上)の頭文字を指します。

最近では必要に応じて Protection:保護の必要性も提唱されPRICEと言われることもあります。

ここではRICE療法についてわかりやすくまとめました。

それぞれ行う順番は前後しても大丈夫ですし、同時に行っても大丈夫です。

①から④までを全てきちんと行うことが何より重要です。

①Rest(安静)とProtection(保護)

捻挫をしたら無理に歩かず、患部をそれ以上痛めないことを最優先してください。

体重をかける時は痛みが出ない範囲にとどめ、テーピングやサポーター、必要なら松葉杖を使いましょう。

初期の適切な安静と保護、その後の早すぎず遅すぎないリハビリが、復帰を速め再発を減らします。

②Ice(冷却)

腫れと痛みを抑える目的で、10〜20分を目安に氷などタオル越しで冷却し、1〜2時間おきにくり返しましょう(凍傷防止に直接氷を当てないよう気をつけてください)。

長時間の“冷やしすぎ”は皮膚を痛めてしまったり、血流を落としすぎてしまい逆効果になることがあるので気をつけてください

③Compression(圧迫)

弾性包帯やサポーターで痛みが増えない範囲で圧迫・固定しましょう。

指先が蒼白になる・しびれるようなら圧迫が強すぎて血流が悪いサインですので、その時はゆるく巻き直しましょう。

圧迫することで腫れを抑え、その後の痛みや足首の動きの回復がスムーズになります。

④Elevation(挙上)

安静時は足を椅子に置いたり、クッションをひくようにして心臓より高くしましょう

心臓より足が下にあると重力で血流が溜まり、腫れやむくみの原因になります。

痛みの緩和にも有効です。

就寝時もできるなら少し高めにしましょう。

受傷後48〜72時間の「やってはいけないこと(HARM)」

受傷後初期対応をして腫れや痛みがおさまったとしても、まだ油断しないでください。
Heat(温める)Alcohol(飲酒)Running(走る等の強い運動)Massage(強いもみほぐし)は腫れを悪化させ回復を遅らせることがあります。

受傷後数日は避けるのが安心です。

どんな時受診すればいい?

•体重をかけられない

•夜間も強い痛み/内出血がどんどん広がる

•足首からつま先にかけて、しびれ・蒼白・冷感などの症状がある

•腫れが数日で引かない、何回も捻挫をくり返す

などの症状がある方は受診を強くお勧めします。

そういった症状がない方でも少しでも気になることがあればいつでも相談してください。

よくある質問(Q&A)

Q. どのくらいの時間冷やせばいいですか?

A. 受傷後48〜72時間(2-3日)を目安に冷やしましょう。

腫れ・熱感・痛みが落ち着いたら、温めすぎに注意しつつ少しづつ足首の運動を開始します。

運動再会後に熱を持ったり腫れることがあるので、その時は運動後冷やすようにしてください。

痛みが出る場合は体が安静にしてほしいと言ってるサインです。

Q. 動かしていいタイミングはいつですか?

A. 強い痛みが引いたら痛みの出ない範囲で少しづつ動かしましょう。

痛みがないのに怖いからといって動かさないでいると足首の硬さがみられるようになります。

Q. 市販の湿布や内服は使っても大丈夫ですか?

A. 一時的な痛みのコントロールとして有効です

しかし “最適なタイミングでの段階的なリハビリ”が捻挫の治療では何より有効です

その人その人で既往症や他剤との相互作用もあるため、自己判断での使用は避け、医師にご相談ください。

当院でのサポート

ササモト整形外科では、受傷直後の正しいRICE指導から再発予防のリハビリまで責任を持ってサポートします。

レントゲンや超音波で骨や靭帯などの細かいところまで損傷部位を確認し、テーピング・装具・段階的リハビリを組み合わせます。

痛みが強い時期は貼り薬や内服を最小限で適切に調整し、早期復帰を目指します。

おまけ

RICEの“その先”へ——PEACE & LOVE

私が医学生の頃から捻挫(けが)の初期対応といえばRICE療法が一般的でした。

今もその考えはゴールドスタンダードですが、最近では急性期対応以外に、回復期を含めた考え方が提唱されるようになっています。

それがPEACE & LOVEです。

急性期はPEACE(Protection/保護Elevation/挙上Avoid anti-inflammatories/抗炎症薬(痛み止め)の乱用を避けるCompression/圧迫Education/教育)、回復期は LOVE(Load/適切な負荷Optimism/前向きな気持ちVascularisation/全身の血液循環を高める運動Exercise/運動療法)という新しいフレームが推奨されています。

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣
けがの治療は、その場の痛みを消して終わりじゃありません。

痛みが落ち着いたあとから始めるリハビリや、体の仕組みを知っていくこと、そして「けがをしても前を向いて暮らす力」まで、全部が治療だと思っています。

痛みだけでなく、不安や落ち込みごと受け止め、からだと気持ち、両方が軽くなることで少しでも笑顔になれるような医療をササモト整形外科では提供します。

焦らなくて大丈夫。

わからないことは、いつでもなんでも聞いてください。

私たちがしっかり寄り添ってお伝えします。

参考文献

  • Martin RL, et al. Ankle Stability and Movement Coordination Impairments: Lateral Ankle Ligament Sprains – Revision 2021. J Orthop Sports Phys Ther. 2021.
  • Valderrabano et al. Management and treatment of ankle sprain according to clinical practice guidelines: a systematic review. J Exerc Rehabil. 2022.
  • Bleakley C, et al. The use of ice in the treatment of acute soft-tissue injury: a systematic review of randomized controlled trials. Br J Sports Med. 2004.
  • Dubois B, Esculier J-F. Soft-tissue injuries simply need PEACE & LOVE. Br J Sports Med.
  • この記事の監修者について

    ササモト整形外科 副院長
    ささもと佐々本
    たけし丈嗣

    学歴・経歴

    • 金沢医科大学 医学部卒業
    • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
    • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
    • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

    資格・専門領域

    • 医学博士
    • 日本整形外科学会認定専門医
    • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
    • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

    診療に対する想い

    患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

    趣味・活動

    • バレーボール歴20年以上
    • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)

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