頚椎症性脊髄症とは?—首のトラブルが手足の動きにも影響する?

「手がしびれる、歩くとつまづく…これって歳のせい?」

最近、こんな症状を感じていませんか?

  • 手がしびれて細かい作業がしにくい
  • お箸やペンをうまく使えなくなった
  • ボタンを留めたり、服を着るのが難しくなった
  • 歩くとつまずきやすい、足がもつれる
  • ふらついてバランスが取りにくい

もし、これらの症状が続いているなら、頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)の可能性があります。

進行すると日常生活に支障をきたすこともあるため、早めに気づいて適切な治療を受けることが大切です!

頚椎症性脊髄症とは?

頚椎(けいつい)とは、背骨の中にある7つの骨(椎骨)が積み重なった部分のことです。その中心には脊髄が通っており、脳からの指令を全身に伝える役割をしています。

しかし、加齢や頚椎の変形によって脊髄が圧迫されると、手足の動きが悪くなったり、しびれが出たりするのです。この状態を頚椎症性脊髄症といいます。

なぜ頚椎症性脊髄症になるの?(原因)

1. 加齢による頚椎の変化

頚椎の椎間板(クッションの役割をする軟骨)は、加齢とともに摩耗し、弾力が失われていきます。

すると、頚椎の骨同士がぶつかり合い、骨棘(こつきょく:トゲのような骨の突起)ができたり、脊髄周辺の靭帯が腫れることがあります。

この状態を変形性頚椎症と言います。それらが脊髄を圧迫してしまい、手足のしびれや歩行障害が出てくるのです。

2. 外傷や過去の首のケガ

交通事故やスポーツでのむち打ちがきっかけで、数年〜数十年後に頚椎が変形し、脊髄を圧迫することがあります。

「昔、交通事故で首を痛めたけど、今は大丈夫…」と思っていても、時間が経ってから症状が出てくることがあるので注意が必要です。

どんな症状が出るの?

頚椎症性脊髄症は、ゆっくり進行することが多く、最初は「なんとなく手がしびれる」「歩くと違和感がある」程度ですが、放置すると日常生活に支障をきたすほど症状が悪化することもあります。

1. 首や肩の痛み

  • 首や肩のこり、痛みが長引く
  • 首を後ろに反らしたときに痛みが増す
  • 肩甲骨周りにも違和感がある
  • 寝違えたような痛みが続くことがある

2. 首や肩、腕から指のしびれ

  • 首を動かしたときに腕や手がビリビリしびれる
  • 肩から指先までの神経の流れが悪くなり、ジンジンする感覚がある
  • 物を持つときに力が入りにくい

3. 足の症状(歩行障害)

  • 足がもつれて歩きにくい
  • つま先が上がらず、よくつまずく
  • 階段の昇り降りが難しくなる
  • バランスを崩しやすく、転倒しやすい

4. 手の症状(巧緻運動障害:こうちうんどうしょうがい)

  • お箸を使うのが難しくなった
  • ボタンを留めるのに時間がかかる
  • 字が書きにくくなった、筆圧が弱くなる
  • ペットボトルのフタを開けるのがつらい

どうやって診断するの?

1. 身体診察

症状が神経によるものなのかその他の原因によるものなのかを判断します。
痛みやしびれの範囲、筋力低下、巧緻運動障害の有無、歩行のバランスを評価します。

2. 画像検査(レントゲン・MRI)

  • レントゲン:頚椎の変形や骨棘の有無を確認します。

※症状が強い場合はMRI検査にて脊髄がどの程度圧迫されているかを詳しくチェックします。

どうやって治療するの?(治療・対策)

神経の症状は適切な治療を行えば症状を緩和したり、進行を遅らせることが可能です!

1. 保存療法(手術をしない治療)

消炎鎮痛薬(NSAIDs)などのお薬で痛みを和らげたり炎症を軽減させます。
リハビリで首の動きを改善させ、疼痛を緩和したり手足の機能を維持します。

2. 手術療法(症状が進行した場合)

次のようなケースでは、手術が検討されます。

  • 歩行障害が悪化し、転倒しやすくなっている
  • 手の動きが極端に悪くなり、ものが持てない字が書けなくなっている
  • 痛みがあまりにも強く日常生活が困難になっている

手術では、頚椎の圧迫を取り除き、脊髄への負担を減らすことが目的となります。

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

「最近、手がしびれるし、歩くとつまずくことが増えたけど、歳のせいかな?」そう思っていませんか?

実は、その症状、頚椎の問題が原因かもしれません。頚椎症性脊髄症は、放置すると進行してしまう可能性がある病気です。

でも、早めに治療を始めれば、進行を抑え、症状を改善することができます!

「最近手が動かしにくい」「歩くとふらつく」という方は、一度、専門医に相談してみましょう。一緒に治療を進めていきましょう!

参考文献

  • Shimomura T, et al. “Cervical spondylotic myelopathy: Pathophysiology and management.” Spine, 2019.
  • Fehlings MG, et al. “A clinical practice guideline for the management of degenerative cervical myelopathy.” Spine J, 2017.

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)