「指を強くぶつけてしまって痛みが取れない…どうすればいい?」
- 指をぶつけたあとに腫れと痛みが続いている
- 関節が曲げづらくなった、または伸びなくなった
- 指が変形しているように見える
- 内出血があり、指が紫色になっている
このような症状がある場合、突き指(つきゆび)の可能性があります。突き指とは、指先に強い衝撃が加わることで、関節や靱帯、腱、場合によっては骨にダメージが及ぶケガの総称です。
よく「突き指だから放っておけば治る」と思われがちですが、適切な処置をしないと、指の曲げ伸ばしがうまくできなくなったり、関節が変形してしまうこともあるため、注意が必要です。
突き指とは?
スポーツや日常生活で、指を何かに強くぶつけた経験はありませんか?バレーボール、バスケットボール、キャッチボールなどの球技をしていると、指先にボールが強く当たり、突き指になることがよくあります。
指は3つの関節(指先からそれぞれDIP・PIP・MP関節と言います)から構成されており、それぞれの関節を支える側副靱帯や、指を伸ばす伸筋腱・曲げる屈筋腱が走行しています。
これらの組織が連動してスムーズな指の動きを支えています。外からの衝撃や突き上げにより、靱帯や腱が損傷すると、いわゆる「突き指」と呼ばれる状態になります。
単なる打撲だけでなく、関節の脱臼や靱帯損傷、腱断裂、骨折を伴うこともあるため、正確な診断が重要です。

- 軽度の場合:軽い腫れや痛みがあり、指を動かすと違和感がある
- 中等度の場合:関節の動きが制限され、内出血が目立つ
- 重度の場合:指が変形し、強い痛みが伴う(靱帯損傷・骨折の可能性)
なぜ突き指が起こるのか?
1. スポーツによる指先への衝撃
- バレーボールで指にボールが当たった
- バスケットボールでパスを受け損ねて指を突いた
- キャッチボールでボールをしっかり受け止められずに指をぶつけた
スポーツをしていると、指先に急激な力が加わる場面が多く、突き指のリスクが高くなります。
特に、バレーボールやバスケットボールでは、ボールの勢いを吸収しきれずに指が反ってしまうことで、関節や靱帯に負担がかかりやすいです。

2. 転倒や日常生活での事故
- 転んだときに手をついて指をぶつけた
- ドアや家具の角に指をぶつけた
スポーツをしていなくても、日常生活の中で思わぬ衝撃を受けることがあります。
例えば、転倒時に手をつくことで指に強い負荷がかかり、突き指のような状態になることもあります。
3. 指に過度な負担がかかる動作
- 指を無理に曲げたり伸ばしたりした
- 何かを強く握り込んだ状態で衝撃を受けた
関節が正常な可動域を超えて強く曲げられたり伸ばされたりすると、指の靱帯や腱に負荷がかかり、突き指を引き起こすことがあります。
突き指の症状
- 指の腫れと痛み
- 内出血による紫色のあざ(皮下出血)
- 指を曲げたり伸ばしたりすると痛みがある
- 関節がうまく動かせない(可動域制限)
- 指が変形している、または伸びなくなった(靱帯損傷・腱断裂の可能性)
軽い突き指であれば、数日で痛みが引くこともありますが、症状が続く場合は骨折や靱帯損傷を伴っている可能性があるため、注意が必要です。
突き指の検査
1. 画像検査
- レントゲンを撮影し、骨折や関節のズレがないか確認します
- 超音波検査を用いて、靱帯や腱の損傷の有無やレントゲンでは見つけにくい小さな骨折を評価します
2. 身体診察(徒手検査)
- 腫れの程度や圧痛(押したときの痛み)を確認します
- 関節の動きをチェックし、靱帯や腱が損傷していないかを評価します
- 指を軽く動かしながら、正常な可動域があるかを診察します
突き指の治療
1. 応急処置(RICE療法)
突き指をした直後は、RICE療法(安静・冷却・圧迫・挙上)が基本です。
- 安静(Rest):指を無理に動かさず、できるだけ使わない
- 冷却(Ice):氷や冷却パックで15〜20分間冷やし、炎症を抑える
- 圧迫(Compression):軽くテーピングや包帯で固定し、腫れを防ぐ
- 挙上(Elevation):指を心臓より高い位置に上げ、内出血や腫れを抑える
2. 保存療法(手術をしない治療)
- 軽症ならテーピングで固定し、炎症が引くまで安静にする
- 湿布や消炎鎮痛剤(NSAIDs)で痛みをコントロール
- リハビリを行い、指の動きを取り戻す
軽度の突き指であれば、無理に動かさずに適切な固定をすることで回復します。
ただし、痛みが続く場合は、靱帯損傷や腱断裂の可能性があるため、医療機関で診察を受けることが重要です。
3. 手術療法(重症例)
- 靱帯が完全に断裂している場合は、縫合手術が必要
- 関節のズレ(脱臼)がある場合は、整復手術を行う
- 骨折を伴う場合は、固定や手術が必要になることもある
保存療法で改善しない場合や、指が変形している場合は、手術によって正しい位置に戻す必要があります。
専門医からの一言


突き指は軽く見られがちですが、放置すると関節が硬くなり、指の動きに制限が残ることがあります。
突き指といっても靭帯損傷の程度や骨折があれば手術加療が必要になることもあります。
「痛みが引くだろう」と自己判断せず、指の腫れや変形が気になる場合は、早めに受診しましょう!適切な治療を受けることで、後遺症を残さずに回復できます。
参考文献
- Chung KC, Spilson SV. Jam Injuries of the Finger: Diagnosis and Management. J Hand Surg Am. 2016;41(9):e329–e335.
- Deardorff V. Treating a Jammed Finger. Sports-health. 2019
- American Academy of Family Physicians. Acute Finger Injuries: Part I. Tendons and Ligaments. Am Fam Physician. 2006;73(5):810–816.
この記事の監修者について
学歴・経歴
- 金沢医科大学 医学部卒業
- 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
- 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
- 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開
資格・専門領域
- 医学博士
- 日本整形外科学会認定専門医
- 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
- 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力
診療に対する想い
患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。 科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。 「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。
趣味・活動
- バレーボール歴20年以上
- ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)