半月板損傷とは?—「膝が引っかかる、急に動かなくなる…」

「膝をひねったあとから痛みが続く…それ、半月板の損傷かもしれません」

  • スポーツ中や転倒後、膝をひねったら痛みが出た
  • 階段を下りるときやしゃがんだときに膝が痛む
  • 膝の中で何かが引っかかるような感覚がある
  • 急に膝が動かなくなり、伸ばせなくなる

このような症状がある場合、半月板損傷(はんげつばんそんしょう)の可能性があります。

特にスポーツをしている方や、中高年で膝に負担がかかる動作が多い方に発生しやすい疾患です。

半月板損傷とは?

膝関節には、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の間に、半月板(はんげつばん)という軟骨組織があります。


半月板は、膝関節内のクッションの役割を果たし、膝関節にかかる衝撃を吸収するとともに、関節の安定性を保つ大切な構造です。

膝をひねる、強い衝撃を受けるなどの外傷や、長年の負荷によって半月板が損傷すると、膝の曲げ伸ばし時に痛みや引っかかる感じが生じたり、突然膝が動かなくなることがあります。

なぜ起こるの?

半月板損傷は、大きく2つのタイプに分かれます。

1. 急性損傷(スポーツ・ケガが原因)

  • サッカーやバスケットボールなどの急な方向転換やジャンプ動作
  • 柔道やラグビーなどの踏ん張る動作・転倒時の衝撃
  • 交通事故や転倒

大きな力による受傷であれば、前十字靭帯損傷などを合併することもあります。

2. 変性損傷(加齢による変性)

  • 40歳以降の方で、膝の負担が長年続いている
  • 軽い動作でも「ギクッ」とした違和感や痛みが出る
  • 若い頃にスポーツを頑張っていた

痛みが出た時点でスポーツ歴や外傷がなくても、中高年の方では半月板がすり減りやすく、ちょっとした動作で傷つくことがあります。

若い頃に運動をしていた方ほど膝に負担がかかっていたため、半月板が損傷しやすい状態になっていると言えます。

どんな症状が出るの?

  • 体をひねる動作や階段昇降時に膝が痛む
  • 曲げ伸ばしで引っかかるような感じがする
  • 膝が途中で動かなくなり、伸ばせなくなる
  • 膝に水がたまる、腫れぼったくなる

半月板は膝のクッションとして機能しますが、損傷すると裂けた部分が関節内で動き、膝の曲げ伸ばしに伴って関節の隙間に挟まることがあります。この状態をロッキングと言います。

特に、膝をひねる動作や急な体重移動の際に損傷が悪化しやすく、断片が引っかかることで膝が動かなったりもします。

軽度の場合は膝を慎重に動かすことで一時的に改善することもありますが、症状が繰り返される場合や痛みが強い場合は、徒手整復、リハビリ、注射治療を行い、必要に応じて関節鏡手術で損傷した半月板を修復または部分切除することがあります。

どんな検査をするの?

1.身体診察

膝の痛みの場所、動かせる範囲、腫れの有無、O脚の程度や関節の不安定性などを評価します。

2.画像検査

レントゲンにて関節の隙間の狭さ、変形(骨棘)程度などを確認します。また、超音波によって関節内の水腫の程度や滑膜の腫れ具合、半月板の状態を確認します。

疼痛が改善せず半月板の詳細な状態を確認する必要があればMRI検査を検討します。

※当院にはMRI設備がないため、検査が必要な場合は近隣の協力病院にご紹介し、検査を依頼させていただきます。

どうやって治すの?(治療)

保存療法(手術なしの治療)

軽度の損傷や変性損傷であれば、まずは保存療法で改善を目指します。

半月板の保存治療では、痛み止めやヒアルロン酸やステロイドの注射で症状を和らげながら、筋力強化や荷重の調整を行い、膝への負担を軽減することが基本となります。

特に、大腿四頭筋を鍛えることで膝の安定性が向上し、痛みの軽減につながります。

注意点として、半月板が損傷するとクッション性が低下し、関節にかかる負担が増えることで変形性膝関節症へ進行するリスクが高まります。

そのため、関節を保護しながら適切なリハビリを行い、膝の機能を維持することが重要です。

手術療法(保存療法で改善しない場合)

  • 損傷した半月板を縫合して修復する方法(半月板縫合術)
  • 損傷部分のみを切除し、負担を軽減する方法(部分切除術)
  • いずれも小さな傷で行う低侵襲な手術で、術後の回復が早いのが特徴です

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

「膝の痛みは加齢のせいだから仕方ない」と思っていませんか?半月板損傷は、適切な治療を行うことで痛みを軽減し、関節の動きを保つことができます。

軽度の損傷であればリハビリや注射などで十分に改善することもありますが、ロッキングなどの症状があったり、痛みが改善しない場合は早めの治療が必要です。

半月板損傷に対しては切除する方法が主流でしたが、近年では半月板を切除することで関節の変形が進行するケースがあると報告されており、可能な限り早期に半月板の修復を行うことが望ましいという意見もあります。

手術の方法については執刀医の見解によって異なるため、適切な治療を選択するためにも、早めに専門医へ相談することが重要です。

当院では、超音波検査を用いてリアルタイムで膝の状態を評価し、必要に応じMRIを併用することで、患者さん一人ひとりに合った治療を提供します。

「膝の違和感が気になる」「歩くのがつらくなってきた」そんなお悩みがあれば、気軽にご相談ください。

参考文献

  • 日本整形外科学会. 半月板損傷 診療ガイドライン 2020
  • Beaufils P, Becker R, Kopf S, et al. Meniscus tears: current understanding and management. Orthop Traumatol Surg Res. 2023;109(1):103209.
  • Katz JN, Brophy RH, Chaisson CE, et al. Surgery versus Physical Therapy for Meniscal Tear and Osteoarthritis. N Engl J Med. 2022;386(4):328-340.

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)