「手の小指や薬指がしびれる…これは何?」
- 小指と薬指にしびれや違和感がある
- 肘を曲げたままにしていると、しびれが強くなる
- 手の力が入りにくく、細かい動作がしづらい
- 握力が低下し、物を落としやすくなった
- 指が変形してきたような気がする
このような症状がある場合、肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)の可能性があります。
肘部管症候群は進行すると、手の細かい動作がしづらくなったり、指の変形が起こることもあるため、早めの診断と治療が大切です。
肘部管症候群とは?
肘部管症候群は、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫されることで、小指や薬指のしびれや筋力低下が起こる疾患です。尺骨神経は、指の動きや握力を司る重要な神経であり、特に小指と薬指の動きに深く関与しています。
この尺骨神経は、肘の内側にある「肘部管(ちゅうぶかん)」というトンネル状の組織を通過しています。しかし、肘を頻繁に曲げたり、外傷を受けたりすると、この部分で神経が圧迫され、しびれや筋力低下を引き起こすことがあります。

なぜ肘部管症候群が起こるのか?
1. 肘の曲げすぎや長時間の圧迫
- デスクワークやスマホの操作で長時間肘を曲げている
- 運転やスポーツで肘を頻繁に使う
特にデスクワークやスマホをよく使う人は、長時間肘を曲げたままにしていることで尺骨神経が圧迫され、症状が出やすくなります。
2. 肘の変形や骨の異常
- 過去に肘を骨折したことがある(骨が変形し、神経を圧迫する)
- 加齢による骨の変形(変形性関節症)
- ガングリオン(神経周囲にできる腫瘤)ができている
骨折や関節の変形があると、尺骨神経が圧迫されやすくなり、肘部管症候群を発症することがあります。
3. 反復する動作による負担
- 楽器演奏(ピアノ・ギターなど)
- 職業的な手作業(大工・電気工事・整備など)
- スポーツ(野球・ゴルフ・テニスなど)
繰り返し肘を曲げ伸ばしする動作は、神経に継続的な刺激を与え、炎症や圧迫を引き起こします。
肘部管症候群の症状
- 小指と薬指のしびれ、違和感
- 肘を曲げた状態で症状が悪化する
- 握力が低下し、細かい動作がしづらくなる
痺れの範囲は小指から薬指の半分(小指側のみ)が痺れるのが特徴です。症状が進んでくると腕の小指側にも痺れが出現し、握力が低下したり、手の甲の筋萎縮がみられたりします。

肘部管症候群の治療
1. 保存療法(手術をしない治療)
肘部管症候群の症状が軽度の場合、まず保存療法から始めます。長時間肘を曲げ続けないように意識し、肘に負担をかけない生活習慣を心掛けます。
神経症状が見られる場合は炎症を抑えるために、消炎鎮痛剤やビタミン剤(特にB12やE)が処方されます。これにより、痛みを軽減させ末梢神経の補修が期待できます。
2. 手術療法(重症例)
保存療法では改善が見られない場合や、症状が進行して手の機能に支障をきたす場合には、手術が検討されます。
専門医からの一言


肘部管症候群は、放置すると手のしびれや握力低下が進行し、日常生活の中で細かい動作が困難になることがあります。
特に、進行すると手指の筋力低下や巧緻運動障害を引き起こすことがあり、症状が悪化する前に適切な治療を受けることが重要です。
「しびれくらいなら大丈夫」と放置せず、気になる症状がある場合は、早めに医師に相談しましょう。
参考文献
- Graf A, Ahmed AS, Roundy R, Gottschalk MB, Dempsey A. Modern Treatment of Cubital Tunnel Syndrome: Evidence and Controversy. J Hand Surg Glob Online. 2023;5(4):229–236.
- Shrestha P, Dhungana I, Kolakshyapati M. Cubital Tunnel Syndrome: A Retrospective Analysis of Surgical Management. Nepal J Neurosci. 2023;20(2):35–39.
- Wolny T, Fernández-De-Las-Peñas C, Granek A, Linek P. Real Versus Sham-Based Neurodynamic Techniques in the Treatment of Cubital Tunnel Syndrome: A Randomized Controlled Trial. J Clin Med. 2023;12(6):2096.
この記事の監修者について
学歴・経歴
- 金沢医科大学 医学部卒業
- 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
- 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
- 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開
資格・専門領域
- 医学博士
- 日本整形外科学会認定専門医
- 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
- 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力
診療に対する想い
患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。 科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。 「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。
趣味・活動
- バレーボール歴20年以上
- ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)