頚椎症性神経根症とは?—首の痛みだけじゃない、腕のしびれや痛みの原因かも?

「首から肩、腕にかけての痛みやしびれ…これってただの肩こり?」

最近、こんな症状を感じていませんか?

  • 首を動かすと肩や腕が痛む
  • 腕や指がしびれて感覚が鈍くなってきた
  • 腕に力が入りにくくなり、握力が低下した
  • 腕や手の一部だけ感覚がなくなることがある

「肩こりかな?」と思って放置していませんか?もしかすると、それは頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)かもしれません。

放置すると腕の力が入りにくくなったり、手の感覚が鈍くなったりすることもあるため、早めの診察が大切です!

頚椎症性神経根症とは?

頚椎(けいつい)とは、首にある7つの背骨が積み重なった部分のことです。その中には脊髄という大切な神経が通っており、脊髄から神経根(しんけいこん)と呼ばれる神経の枝(神経根)が分岐し、腕や手に向かいます。

しかし、頚椎の変形や椎間板の異常で神経根が圧迫されると、腕や手に痛みやしびれが出るのです。この状態を頚椎症性神経根症といいます。

頚椎の椎間板(クッションの役割をする軟骨)は、加齢とともに摩耗し、弾力が失われていきます。すると、頚椎の骨同士がぶつかり合い、骨棘(こつきょく:トゲのような骨の突起)ができたり、脊髄周辺の靭帯が腫れることがあります。この状態を変形性頚椎症と言います。

それらが神経根を圧迫してしまい、手足のしびれや歩行障害が出てくるのです。

どんな症状が出るの?

頚椎症性神経根症では、首だけでなく、肩や腕、指に痛みやしびれが広がるのが特徴です。

1. 首や肩の痛み

  • 首を動かすと肩や腕に痛みが走る
  • 首を後ろに反らすと痛みが悪化する
  • 肩甲骨の周りにズキズキするような痛みがある

2. 首や肩、腕から指のしびれ

  • 肩から腕にかけてビリビリとしたしびれが広がる
  • 指先がジンジンして感覚が鈍い
  • 腕の一部だけ感覚がなくなることがある

圧迫される神経根の部位によって、しびれが出る範囲が異なるのが特徴です。

たとえば、

  • C5神経根が圧迫されると、肩から上腕の外側に症状が出る
  • C6神経根が圧迫されると、親指側の前腕や指にしびれが出る
  • C7神経根が圧迫されると、中指周辺がしびれる
  • C8神経根が圧迫されると、小指側の前腕や指に症状が出る

※首の神経は左右に8本ずつあり、それぞれC1からC8と呼ばれます。「どの指がしびれるか」で、圧迫されている神経がどこかを推測できるのです。

3. 腕や手の筋力低下

  • 腕に力が入りにくく、物を持つのがつらい
  • 握力が低下し、ペットボトルのフタが開けにくい
  • 腕の筋肉が痩せてきた(筋萎縮)

どうやって診断するの?

1. 身体診察

症状が神経によるものなのかその他の原因によるものなのかを判断します。
痛みやしびれの範囲、筋力低下、巧緻運動障害の有無、歩行のバランスを評価します。

2. 画像検査(レントゲン・MRI)

  • レントゲン:頚椎の変形や骨棘の有無を確認します。

※症状が強い場合はMRI検査にて脊髄がどの程度圧迫されているかを詳しくチェックします。

どうやって治療するの?(治療・対策)

「首を動かすと痛みが走るし、腕もしびれる…でも、どうすればいい?」


安心してください。頚椎症性神経根症は適切な治療をすれば、症状を軽減できることが多いです!

1. 保存療法(手術をしない治療)

消炎鎮痛薬(NSAIDs)などのお薬で痛みを和らげたり炎症を軽減させます。
リハビリで首の動きを改善させ、疼痛を緩和したり手足の機能を維持します。

2. 神経ブロック注射(痛みが強い場合)

神経の圧迫による痛みを抑えるために、局所麻酔やステロイド注射を行います。

手術療法(症状が進行した場合)

次のようなケースでは、手術が検討されます。

  • 腕の筋力が入りにくい、動かなくなった(麻痺している)
  • 手の動きが極端に悪くなり、ものが持てない字が書けなくなっている
  • 痛みがあまりにも強く日常生活が困難になっている

手術では、頚椎の圧迫を取り除き、脊髄への負担を減らすことが目的となります。

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

「肩こりがひどいだけだと思っていたら、腕のしびれが出てきた…」
実は、それは神経の圧迫が進んでいるサインかもしれません!

頚椎症性神経根症は、適切な治療を行えば症状の改善が期待できる病気です。

「痛みやしびれが気になる」「腕に力が入りにくい」と感じたら、早めに受診し、一緒に治療を進めていきましょう!

参考文献

  • Zhang Y, Xu C, Wang Y, et al. Anterior cervical discectomy and fusion versus posterior cervical foraminotomy for single-level unilateral cervical radiculopathy: a systematic review and meta-analysis. Eur Spine J. 2022;31(5):1115–1126.
  • Huang WW, Huang WW, Wang W, et al. Conservative treatment versus surgery for cervical spondylotic radiculopathy: a systematic review. J Orthop Surg Res. 2021;16(1):548.
  • Suri P, Hunter DJ, Rainville J, et al. Incidence and natural history of cervical spondylotic radiculopathy: a population-based study. Spine (Phila Pa 1976). 2020;45(3):E148–E154.

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)