「肩こりがひどくて腕まで痛い…これって何?」
- 肩こりだけでなく、腕や手にもしびれや痛みがある
- パソコン作業や細かい手作業が多いと症状が悪化する
- マッサージをしてもすぐに元に戻る
- 首や肩を動かすと違和感がある、張りを感じる
このような症状に心当たりがある方、もしかすると頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)かもしれません。
頸肩腕症候群とは?
「肩こりとは違うの?」と思われるかもしれませんが、頸肩腕症候群は、肩こりを含むもっと広範な症状を指す言葉です。
肩こりは首や肩周りの筋肉の緊張による不調が中心ですが、頸肩腕症候群では肩だけでなく、腕や手まで症状が広がり、しびれや痛み、動かしにくさが伴うことが多いのが特徴です。
特に、長時間のデスクワークや繰り返しの細かい作業を続けることで発症しやすく、現代人にとっては「職業病」ともいえる疾患のひとつになっています。
この疾患の特徴として、
- 特定の病気(ヘルニアや神経障害)がないのに症状が続くことが多い
- 肩こりを超えて、腕や手にまで症状が広がる
- 仕事や日常生活の動作が原因となるケースが多い
などが挙げられます。
なぜ頸肩腕症候群になるの?(原因)
1. 長時間のデスクワーク・細かい作業の繰り返し
- パソコン作業、スマホの長時間使用
- 料理・手芸・ピアノなどの細かい作業を続ける
- 重い荷物を持つことが多い
同じ姿勢で長時間作業を続けると、首や肩の筋肉に大きな負担がかかり、血流が悪化します。
また、手や指を繰り返し使うことで、腕の筋肉や神経にも影響が及び、痛みやしびれが広がることがあります。
2. 姿勢の悪さ(猫背・ストレートネック)
- 猫背や前かがみの姿勢が続く
- スマホやPCを長時間見続ける
- 首が前に突き出した「ストレートネック」になっている
現代では、スマホやPCの長時間使用によって、首が前に出た姿勢(ストレートネック)になりがちです。
この状態では、首や肩に余計な負担がかかり、肩こりだけでなく、腕や手のしびれにもつながることがあります。
3. ストレスや自律神経の乱れ
- 仕事や家庭でストレスを感じている
- 夜なかなか眠れず、疲れが取れにくい
ストレスが続くと、自律神経のバランスが乱れ、筋肉の緊張が強まり、肩や腕の不調を引き起こすことがあります。
特に、デスクワークの方や緊張しやすい方は、ストレスが原因で肩や腕の痛みが悪化することも。
どんな症状が出るの?
- 首や肩がこり、腕や手にしびれや痛みが広がる
- 腕がだるく、力が入りにくい
- 指先が冷たく感じたり、しびれたりする
- 手を動かしにくくなり、ボタンを留めたり、ペンを持つのが大変になる
- 腕を動かしたときに違和感がある、重く感じる
このように、肩こりを超えて、腕や手の感覚にも異常が出るのが頸肩腕症候群の特徴です。
どうやって診断するの?
頸肩腕症候群の診断では、まずは他の疾患の可能性を除外することが重要です。
そのために、以下のような検査を行います。
1. 身体診察
- 症状が神経によるものなのかその他の原因によるものなのかを判断します
- 痛みやしびれの範囲、筋力低下、巧緻運動障害の有無、歩行のバランスを評価します
2. 画像検査(レントゲン・MRI)
- レントゲン:頚椎の変形(骨棘という骨の変形やストレートネックなど)がないか確認します。
- 症状が強い場合はMRI検査にて脊髄が圧迫されているかを詳しくチェックします。
頚椎症やヘルニアなどの疾患がないことを確認し、それらを除外した上で頸肩腕症候群と診断します。
どのように治療するの?
1. 正しい姿勢を意識する
まずは、普段の姿勢を振り返ってみましょう。
- デスクワーク中、気づいたら首が前に出ていませんか?
- スマホを操作するとき、顔が下を向きすぎていませんか?
首や肩に負担をかけないためには、
- パソコンの画面は目の高さに合わせる
- スマホはできるだけ目線の高さで使う
- 背筋を伸ばして座る(背もたれを活用すると楽になります)
このちょっとした意識だけで、肩こりの予防につながります。
2. 筋肉をほぐして血流を改善する
肩こりを感じたら、まずは肩を軽く動かしてみましょう。肩をぐるぐる回すだけでも、血流が良くなり、肩こりが和らぎます。
特におすすめなのが、肩甲骨を意識したストレッチです。
- 肩をすくめるように持ち上げてストンと落とす(僧帽筋をほぐす)
- 腕を前後に大きく回して肩甲骨を動かす
- 首をゆっくり左右に傾け、ストレッチする
長時間座りっぱなしになってしまう方は、30分に1回は肩や首を動かしてみてください。こまめにストレッチをするだけで、血流が良くなり、肩こりの予防になりますよ。
3. 温めることで筋肉をリラックスさせる
肩こりがひどくなったときは、とにかく温めるのが効果的!血流が悪くなると筋肉が硬くなりやすいため、温めることで血流を促進し、肩こりを和らげることができます。
- お風呂にしっかり浸かる(40℃前後のお湯が理想)
- ホットパックや蒸しタオルで首や肩を温める
- カイロを活用する(寒い季節は肩甲骨の間を温めると効果的)
シャワーだけで済ませてしまう方も多いですが、できれば湯船に浸かる時間を作ると、肩こりだけでなく全身の疲労回復にもつながりますよ!
4. 鎮痛剤の内服や湿布の使用
- 鎮痛剤の飲み薬、湿布や塗り薬で炎症を抑える
- 痛みの部位に局所麻酔薬やハイドロリリース注射を行う
痛みが強い場合は、鎮痛剤(NSAIDs)や注射を使うこともよくあります。必要に応じて薬を使うことで、日常生活が楽になります。
専門医からの一言


肩こりと違い、頸肩腕症候群は腕や手のしびれや違和感を伴うこともある疾患です。そのまま放置していると、日常生活の動作に影響が出ることもあります。
まずは、姿勢を見直し、適度なストレッチや温める習慣を取り入れてみましょう。
それでも改善しない場合や、しびれや痛みが続く場合は、他の病気が隠れている可能性もあるため、一度専門医の診察を受けることをおすすめします。
気になる症状は、早めに対処することが大切です。一緒に改善していきましょう!
参考文献
- Lascurain-Aguirrebena I, Newham DJ, Critchley DJ, et al. Effectiveness of neural mobilisation for the treatment of nerve-related cervicobrachial pain: a systematic review and meta-analysis. J Clin Med. 2023;12(20):6480.
- Alshami AM, Bamhair DA. Effect of manual therapy with exercise in patients with chronic cervical radiculopathy: a randomized clinical trial. Trials. 2021;22(1):716.
- Guzman J, Haldeman S, Carroll LJ, et al. Clinical practice implications of the Bone and Joint Decade 2000–2010 Task Force on Neck Pain and Its Associated Disorders: from concepts and findings to recommendations. Spine (Phila Pa 1976). 2008;33(4 Suppl):S199–S213.
この記事の監修者について
学歴・経歴
- 金沢医科大学 医学部卒業
- 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
- 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
- 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開
資格・専門領域
- 医学博士
- 日本整形外科学会認定専門医
- 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
- 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力
診療に対する想い
患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。 科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。 「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。
趣味・活動
- バレーボール歴20年以上
- ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)