「腰や背中に強い痛みが…これは何?」
- 特に転んだりした覚えがないのに、背中や腰が急に痛くなった
- 前かがみになると痛みが強くなる
- ベッドから起き上がる、歩く、立ち上がるのがつらい
- 以前より背中が丸くなった気がする
- 少しずつ身長が縮んできた気がする
転んでしまって背中や腰が痛くなれば、整形外科を受診しましょうーというのはもちろんなんですが、思い当たる節もないのに、腰が痛いなどの症状がある場合、圧迫骨折(あっぱくこっせつ)の可能性があります。
特に高齢者の方に多く、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)があると、ちょっとした衝撃や少し重いものを持っただけなど日常の動作でも圧迫骨折になることがあります。
圧迫骨折は、脊椎(背骨)の骨が押しつぶされるように変形してしまう骨折です。
転倒などの外傷によるものもありますが、骨がもろくなることで、くしゃみや重い荷物を持ち上げた程度の負荷でも発症することがあるため、注意が必要です。
圧迫骨折とは?
背骨(脊椎)は、小さな骨(椎骨)が積み重なってできています。


この椎骨がつぶれてしまうのが圧迫骨折です。通常の骨折は骨がポキッと折れるイメージですが、圧迫骨折は骨が押しつぶされるように変形するため、痛みが強く、姿勢の変化(背中が丸くなる、身長が縮む)を伴うことがあります。
特に、高齢の方や骨粗鬆症のある方は、強い衝撃を受けていなくても骨折することがあるため、知らないうちに骨折していることもあります。
なぜ圧迫骨折が起こるのか?
1. 骨粗鬆症による骨の脆弱化がある
骨粗鬆症がある方は、背骨を含めた骨がもろくなってしまいます。圧迫骨折を起こすような軽微な動作には、日常生活の中で無意識に行っているような動作が多く含まれます。
骨が脆くなっていると、強い衝撃を受けなくても骨折が生じることがあります。以下のような動作に注意が必要です。
物を持ち上げる
軽い荷物(買い物袋や掃除機、布団)を持ち上げるだけでも、圧迫骨折が起こることがあります。特に、前かがみになって物を持ち上げる動作は要注意です。
ベッドや椅子から立ち上がる・座る
勢いよく立ち上がる・座ることで、背骨に負荷がかかり腰痛が出現し、調べてみたら圧迫骨折していた人も珍しくありません。特に座った状態から急に体をひねると、骨折のリスクが高まります。
くしゃみ・咳をする
骨密度が大きく低下しているような人で慢性的な咳を伴う肺疾患があるような人は、頻繁な咳やくしゃみなどによって背骨に負担がかかり圧迫骨折を起こす人もいます。
2. 転倒や強い衝撃
転んだときにお尻を強く打った、ベットや台から落ちてしまったなどの外傷や 重い荷物を持ち上げるなど背骨に強い衝撃が加わると圧迫骨折が起こることがあります。
圧迫骨折の症状
- 強い衝撃が加わった後に急な背中や腰の痛みがある(特に動いたときに悪化)
- 寝返りや立ち上がるときに痛みが強くなる
- 前かがみの姿勢が特につらい
- 痛みがある場所を押すと強い痛みを感じる
- 背中が丸くなり、身長が縮んでくる
圧迫骨折は、骨折した直後は痛みが強いですが、数週間〜数ヶ月で痛みが落ち着いてくることもあります。
しかし、適切な治療をしないと、骨折が進行して背骨の変形が悪化し、姿勢や歩行に影響が出ることもあるため、注意が必要です。
圧迫骨折の検査
1. 画像検査
レントゲン(X線)を撮影し、骨折の有無や骨のつぶれ方を確認します。
骨折直後であれば骨折がはっきりしないことも多いので、痛みが残るようであれば1週間の間をおいてレントゲンを撮り直します。
必要に応じてMRIを撮影し新しい骨折かどうかを調べます。
2. 身体診察(徒手検査)
背中や腰を押して、圧痛(押したときの痛み)があるか確認します。姿勢や歩行の状態をチェックします。
圧迫骨折の治療
1. 保存療法(手術をしない治療)
圧迫骨折に対しては基本的に保存加療を行います。まず鎮痛剤や安静にすることで痛みを緩和させます。次に患者さんそれぞれにコルセットを作成し装着してもらいます。
採寸から完成までに1週間ほどかかりますので、その間はできるだけ安静にしてもらうことをお勧めします。
コルセット完成後は痛みに合わせて少しずつ活動し、寝たきりにならないよう予防していくことが大切です。コルセットの装着期間に関しては、骨が安定するまで装着することが望ましいので、3ヶ月ほど装着していただきます。
圧迫骨折をそのまま放置すると、骨折によってつぶれてしまった背骨がさらにつぶれて全体の背骨のバランスが悪くなり、どんどん背中が曲がってきます。
そうなると他の問題がなかった背骨に負担がかかりまた圧迫骨折を引き起こしてしまい、骨折の連鎖を起こしてしまいます。

2. 手術療法(重症例)
骨折後保存加療を行うもあまりにも痛みが強く生活が困難な場合や、疼みは軽減したものの骨折によって背骨が極端に変形し日常生活に支障をきたす場合や足が痺れたり歩きにくくなったなどの神経症状が出現した場合は手術加療が必要なことがあります。
専門医からの一言


圧迫骨折は、特に骨粗鬆症を持つ高齢者に多い疾患ですが、早期発見・早期治療を行えば、痛みを最小限に抑え、生活の質を維持することができます。
「少し腰が痛いだけ」と放置せず、背中や腰に違和感を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
また、骨粗鬆症の予防と治療をしっかり行うことで、再発を防ぐことができます!
参考文献
- Handel MN, et al. (2023). “Comparative efficacy of postmenopausal osteoporosis treatments: A network meta-analysis.” J Bone Miner Res.
- 厚生労働省「カルシウム摂取と骨の健康に関するメタアナリシス」(2018)
- Smith R, et al. (2022). “Minimally invasive vertebral augmentation in osteoporotic vertebral compression fractures.” Spine J.
この記事の監修者について
学歴・経歴
- 金沢医科大学 医学部卒業
- 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
- 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
- 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開
資格・専門領域
- 医学博士
- 日本整形外科学会認定専門医
- 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
- 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力
診療に対する想い
患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。 科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。 「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。
趣味・活動
- バレーボール歴20年以上
- ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)