結晶性関節炎とは?—突然の関節の激痛、それは“体の中の結晶”が原因かもしれません。

ある日突然、関節が腫れて熱をもって…「これって何?」

  • 朝起きたら足の親指がパンパンに腫れていて、少し触れるだけで激痛が走る
  • 膝に水がたまって痛くて曲げられない
  • 手首や肘の関節が急に赤く腫れてきた

こんな経験をされた方、それは結晶性関節炎かもしれません。これは、体の中にできた「結晶」が関節に炎症を引き起こす病気です。
代表的なものに、「痛風(つうふう)」と「偽痛風(ぎつうふう)」があります。

結晶性関節炎とは

私たちの体の中では、尿酸やカルシウムなどの物質が日々の代謝の中で作られています。本来これらは体に必要な成分ですが、何らかの原因で関節の中に結晶としてたまってしまうことがあります。

体はこの結晶を「異物」とみなしてしまうため、免疫反応が起こり、関節に強い炎症を引き起こすことがあるのです。これが「結晶性関節炎(けっしょうせいかんせつえん)」と呼ばれる病気です。

代表的なものに、

  • 尿酸の結晶が関節にたまる「痛風(つうふう)」
  • ピロリン酸カルシウムの結晶が関節にたまる「偽痛風(ぎつうふう)」

などがあります。

突然関節が赤く腫れて強く痛み出すのが特徴で、早めの対応がとても大切です。

「ただの使いすぎかな?」と思って放置すると、炎症が悪化したり、関節の変形につながることもあるため注意が必要です。

なぜ起こるの?

痛風(つうふう)

関節に尿酸の結晶がたまることで強い炎症を引き起こす疾患です。突然の激痛と腫れが特徴で、放っておくと繰り返す発作や関節変形につながることもあります。

尿酸塩結晶の沈着が原因

血液中の尿酸が多くなることで、関節内に「尿酸の結晶」がたまり、体がそれを異物とみなして強い炎症反応を起こします。

足の親指以外にも起こる

一般的には足の親指のつけ根に起こることで知られていますが、膝・足首・肩などの関節にも痛みが出ることがあります。

高尿酸血症が続くことで発症

「尿酸値が高い状態」が続くと、ある日突然痛風として発症することがあります。

発症の引き金になるもの

食生活(プリン体の多い食品)、飲酒、激しい運動、脱水、ストレス、腎機能の低下などがきっかけになることがあります。

偽痛風(ぎつうふう)

尿酸とは異なり、ピロリン酸カルシウムという結晶が原因で起こる関節炎です。痛風と症状が似ていますが、原因となる結晶が異なります。

ピロリン酸カルシウムの沈着が原因

関節内にピロリン酸カルシウム結晶が沈着することで、関節が炎症を起こします。

高齢者に多い疾患

中高年〜高齢者に多く、加齢による関節の変化や代謝の影響と関連しています。

膝や肩関節に多くみられる

膝や肩関節に最もよく起こりますが、手首や肩などの大きな関節にも炎症が出ることがあります。

尿酸値は正常でも発症する

痛風とは違い、血液中の尿酸値は正常のままでも発症するため、検査での見極めが必要です。

いずれの疾患も、急な関節の腫れや激しい痛みが起こるのが特徴です。

「歩けない、動かすだけで痛い」「何もしていないのに腫れてきた」などの症状がある場合は、自己判断せずに早めに受診しましょう。適切な診断と治療で、症状をコントロールし、再発を防ぐことができます。

どんな症状が出るの?

  • 関節が腫れたり、熱を持ったり、赤くなったりします
  • ズキズキする激しい痛みで歩けない、動かすだけで痛いこともあります
  • 数日から1週間ほどで自然に軽快することもありますが、放置すると繰り返すようになります

痛風と偽痛風の大まかなちがいについて

項目 痛風 偽痛風
原因結晶 尿酸塩結晶 ピロリン酸カルシウム結晶
好発年齢 30~50代男性に多い 高齢者に多い
好発部位 足の親指、足関節など 膝、手首、肩など
血液所見 尿酸値↑ 尿酸は正常のことが多い

結晶性関節炎の検査

症状がそっくりな関節炎には、関節リウマチや感染性関節炎など重篤な病気も含まれるため、正確な診断が非常に重要です。

当院では、以下のような流れで評価を行います。

1. 画像検査

レントゲン検査

関節や骨に変形がないか、石灰沈着(白く写る結晶)があるかどうかを確認します。

超音波検査

石灰の沈着の状態や、関節の中にたまった水(関節水腫)をリアルタイムで確認できます。

関節の中で何が起きているかをリアルタイムで確認することで、結晶性関節炎かどうかの判断に役立ちます。特にエコーは、炎症の程度や腫れの場所を詳しく観察することができます。

2. 血液検査

尿酸値の測定(痛風の確認)

痛風が疑われるときは、血液中の尿酸値をチェックします。
※ただし、痛風発作のときは一時的に尿酸値が下がっていることもあり、注意が必要です。

炎症の指標

  • CRP(C反応性タンパク):体内の炎症の強さを測る指標です
  • ESR(赤沈):炎症や感染があるときに上昇します
  • MMP-3:関節の炎症がどのくらい活動的かをみるマーカーです

関節リウマチの検査(必要に応じて)

結晶性関節炎と症状が似ているため、鑑別診断のために追加します。

3. 関節液検査
関節の中にたまった水(関節液)を採取して調べることは、結晶性関節炎の診断にとても重要です。

この検査では、関節の中にどんな異常があるかを直接確認できるため、診断の決め手になることがあります。

採取した関節液を顕微鏡で観察すると、痛風の場合は「針のようにとがった結晶(尿酸塩結晶)」が、偽痛風の場合は「菱形の結晶(ピロリン酸カルシウム結晶)」が見られます。

これにより、どのタイプの結晶性関節炎かを明確に判断することができます。

他に関節液を採取し、顕微鏡で結晶の有無を確認するとともに、細菌が混入していないかを調べるための細菌培養検査もあわせて行います。


血液検査や関節液の検査は、関節炎の原因を明らかにするための大切な手がかりになります。痛風や偽痛風といった結晶性関節炎なのか、それとも他の疾患による炎症なのかを見極めるうえで、非常に重要な検査です。

特に注意が必要なのは、感染性関節炎(関節の中に細菌が入り炎症を起こす状態)です。この場合は緊急的な治療が必要になるため、見逃さないことが何より大切です。

こうして、「結晶による炎症」なのか、「細菌による感染」なのかを的確に判断し、最も適切な治療へとつなげていきます。

結晶性関節炎の発作時の治療・対処法

急な関節の腫れや激痛を伴う発作が起きたときは、できるだけ早く炎症と痛みを抑えることが治療の第一歩です。

次のような治療法を症状に応じて組み合わせていきます。

消炎鎮痛薬(NSAIDs)

炎症を抑える基本的なお薬で、多くの方にまず使用されます。痛みや腫れを早期に軽減します。

コルヒチン(痛風発作専用の内服薬)

発作の初期に服用することで、痛風による炎症を素早く抑える効果があります。なるべく早めの服用がカギです。

関節内注射や関節穿刺

関節にたまった水を抜いたり、直接薬を注入することで症状を緩和させます。

当院では、超音波を使って安全かつ正確に処置を行っております。

結晶性関節炎の原因治療

痛風

痛風の治療では、血液中の尿酸値を下げることが最も重要なポイントです。発作が落ち着いたあとも、再発を防ぐために継続的な内服治療が必要です。

尿酸値を下げる薬を服用します

尿酸値を安定させ、発作の再発や腎臓への影響を防ぐお薬です。

発作が治まっても、薬を続けることが大切です

痛みがなくなると薬をやめたくなりますが、中断すると再発しやすくなります。医師の指示に従い、継続していきましょう。

偽痛風の方へ

偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶が原因で起こりますが、尿酸のように数値でコントロールする治療薬はありません。

そのため、急な痛みや腫れに対する対症療法と、関節の機能維持が治療の中心になります。

急性期には、痛みと炎症を抑える治療を行います

消炎鎮痛薬や関節内注射などで、炎症を素早く鎮めます。

関節の可動域を保つためのリハビリも大切です

痛みが治まったあとも、関節の動きを保つことで再発予防や生活の質の維持につながります。

痛風の方が気をつけたい生活習慣

痛風は、血液中の尿酸が高い状態(高尿酸血症)が続くことで起こる病気です。そのため、日常生活の中で尿酸値を上げないように意識することがとても大切です。

水分をしっかりとる

体の中の尿酸をスムーズに排出するためには、十分な水分補給が不可欠です。

脱水状態になると尿酸が濃縮され、発作を引き起こしやすくなるため、1日1.5〜2リットル程度の水分摂取を心がけましょう。特に汗をかく季節や運動後は要注意です。

アルコール、とくにビールは控えめに

お酒は尿酸値を上げやすく、痛風発作の引き金になります。

なかでもビールはプリン体を多く含み、尿酸の産生を促進するため注意が必要です。飲む量・頻度を減らし、できれば禁酒を目指すことが理想的です。

食事の工夫(プリン体の摂りすぎに注意)

レバー・白子・干物・魚卵などにはプリン体が多く含まれており、摂りすぎると尿酸値が上昇します。

とはいえ、完全に避ける必要はありません。偏りなく、バランスのよい食事を心がけましょう。

野菜や海藻、乳製品は尿酸値のコントロールに役立つとされています。

肥満やメタボリックシンドロームの改善

体重が増えると尿酸値も上がりやすくなるため、適正体重の維持がとても大切です。

特に内臓脂肪の多い方(メタボ体型)は、尿酸の排出が悪くなる傾向があるため注意が必要です。

適度な運動と食事の見直しを通じて、無理なく体重をコントロールしていきましょう。

生活習慣の改善は、薬と同じくらい重要な“治療”です。痛風と上手に付き合いながら、再発を防ぎ、元気に日常を送るための第一歩として、できることから始めていきましょう。気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談くださいね。

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

「最近、関節が腫れて痛いけど、これって年のせい?」そんなふうに様子を見ていたら実は結晶性関節炎だったということはよくあります。

痛風や偽痛風は、ある日突然強い痛みで私たちの生活に影響を及ぼしますが、適切な治療と生活の工夫によって、再発を防ぐことが可能な病気です。そしてなにより、痛みの原因をしっかり見極めることが、正しい治療への第一歩です。

痛風の治療は、どうしても気長に、そして根気よく続ける必要があります。多くの方が、治療を続けるうちに「つい忘れてしまったり」「めんどくさくて続けれない」と感じてしまうものです。

だからこそ、私たちは患者さんが無理なく続けられるよう、できる限りサポートしていきます。治療が継続できるよう、あなたに合った方法を一緒に考えていきましょう。

参考文献

  • 日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」
  • Abhishek A, Tedeschi SK, Pascart T, et al. The 2023 ACR/EULAR classification criteria for calcium pyrophosphate deposition disease. Ann Rheum Dis. 2023;82(9):1248–1257. 
  • Mandl P, D’Agostino MA, Navarro-Compán V, et al. EULAR recommendations for the use of imaging in the diagnosis and management of crystal-induced arthropathies in clinical practice. Ann Rheum Dis. 2023;82(1):6–7.
  • Flood R, Stack J, McCarthy G. An update on the diagnosis and management of calcium crystal diseases. Curr Rheumatol Rep. 2023;25(8):145–151.

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)