大豆から生まれる力、エクオールのお話

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まずは理解、そして活用。
更年期と骨のケアに、エクオールという選択肢

はじめに

みなさんは「エクオール」という名前を聞いたことがありますか? 

大豆から生まれる成分で、更年期のほてり・発汗などを軽くしたり、骨・関節の健康を支える素材として注目されています。

しかし、日本人のうち体内でエクオールを作れる人は約半分という報告もあり、体内で作れない方は食事だけでは十分な量にならない可能性も。

今回はそんなエクオールについてお話してみたいと思います。

エクオールとは?—女性ホルモンに似た働きを持つ成分

エクオールは、大豆に含まれるイソフラボン(ダイゼイン)が腸内細菌によって変換されることで生成される成分です。

エストロゲン(女性ホルモン)に似た構造を持ち、体内でエストロゲンのような働きをすることが知られています。

しかし、日本人の約50%は腸内にエクオールを作るための細菌を持っていないため、大豆製品を摂取しても体内でエクオールを作れない人が半数程度いるといわれています。そのため、エクオールをサプリメントで補うことが注目されています。

エクオールの主な作用

エクオールは、特に閉経後の女性において、エストロゲンの減少よるさまざまな影響を補う働きが期待されています。

主な作用として以下のものがあります。

1 更年期症状の軽減

エストロゲンは脳の視床下部という自律神経の中枢に作用することで体温調節や血管の収縮・拡張、発汗などの機能をコントロールしています。

閉経によりエストロゲンが低下すると視床下部での神経の調節が狂ってしまい、わずかな体温の変化でも「暑い!」と間違った認識をしてしまいます。

その結果、熱を下げようと発汗作用が強く働き、汗をかきやすくなったり顔が急にほてったりするのです。

エクオールはこの視床下部での神経の調節を正常に促すことで更年期障害と呼ばれる症状を改善する作用が期待されています。

2 骨密度の維持

骨は身体の中でどんどんつくりかえられています。古くなった骨はどんどん壊され、次々と新しい骨を作ることで生まれ変わっています。

この骨の代謝において骨を壊す細胞に破骨細胞というものがあります。エストロゲンはこの破骨細胞が過度に働いて骨を壊しすぎないように抑制をしています。

閉経によりエストロゲンが減少すると破骨細胞が活性化してしまうので骨密度が低下し、骨粗鬆症のリスクが上がると言われています。

エクオールはこの破骨細胞を抑制することで骨密度が低下するのを守る作用が期待されています。

3 皮膚のハリや潤いを保つ

エストロゲンは皮膚に関してコラーゲンの生成を促進しハリや弾力を保ったり、肌の保湿成分であるヒアルロン酸の生成を促すことで潤いのある皮膚を維持しようと働いています。

そのため閉経により皮膚の老化や乾燥、シワの増加を引き起こします。エクオールはコラーゲンやヒアルロン酸の生成を促すことで皮膚のハリや潤いを保つ作用があります。

4 紫外線ダメージからの保護

エストロゲンは、皮膚の細胞を保護し、紫外線によるダメージを軽減する働きがあります。

そのため、閉経によりエストロゲンが減少すると、紫外線によるシミやくすみが増えやすくなります。

エクオールは紫外線によるダメージを軽減しシミ予防につながります。

5 関節や腱の健康維持

エストロゲンは関節内のさまざまな組織にも働きかけています。関節内には「滑膜」という組織があり、ここで関節液を分泌することで関節の動きを滑らかに保っています。

エストロゲンは滑膜の炎症を抑える作用があり、関節や腱の腫れや痛みを予防しています。また、軟骨を保護し、関節軟骨がすり減るのを防ぐ役割もあります。

閉経によりこれらの作用が失われることで指の変形(へバーデン結節・ブシャール結節、母指CM関節症など)や手の腱鞘炎(ばね指やドケルバン病)を発症しやすくなります。
各疾患に関してはこちらを参考ください

実際に40−50歳頃にかけてこれらの疾患は女性で急増します。エクオールは滑膜や軟骨を保護する作用が期待されており、関節の健康維持につながります。

更年期の症状対策にエクオールを活用しましょう!

更年期になるとどうしてもエストロゲンの低下が起こってしまいます。エストロゲンの低下を防ぐすべはありませんが、エクオールの作用はエストロゲン作用と似ているため更年期のさまざまな症状を予防することができると言われています。

豆腐や納豆などの大豆製品を積極的に摂取することでエクオールを体内で生成することが可能です。しかし、日本人の約50%は腸内にエクオールを作るための細菌を持っていないため、大豆製品を摂取しても体内でエクオールを作れない人が半数程度いるといわれています。

体内でエクオールを生成できるかどうかは検査キットを使えばわかります。生成ができない方や普段から大豆製品を摂取しない方はサプリメントで摂取することをお勧めします。1日にS-エクオール10mgを摂取し続けた方の6割で症状が改善したという報告もあります。

私たち整形外科からの視点でお話しさせていただくと、閉経後はへバーデン結節、ブシャール結節、母指CM関節、ばね指、ドケルバン病など指や手周辺の痛みを伴う疾患が急増します。

関節や腱の健康維持においてエクオールはとても有効なものと考えます。しかし、エクオールは関節の変形や腱鞘炎に対する痛み止めというよりは関節や腱の健康維持に効果を発揮します。

変形が進んでしまった方に関しては変形を元に戻すことはできませんし変形が進めば進むほど疼痛を和らげることも難しくなります。

早い段階でエクオールを使用してもらい予防することがとても重要と考えます。

よくある質問(Q&A)

Q.どんな人が飲めばいいですか?

A.更年期前後でほてり・発汗・睡眠の乱れが気になる方、指や手のこわばり・腱鞘炎をくり返す方、骨の健康が心配な方に有効な選択肢の一つになります。

Q.いつ飲むんですか? 効果はどのくらいで分かりますか?

A.製品によって異なりますが、基本的には毎日内服(S-エクオール10mg/日)します。個人差がありますが、数週間〜2–3か月で効果を実感できたという人が多いようです。

Q.大豆食品を食べていれば十分ですか?

A.体内でエクオールを作れる人/作れない人がいます(市販の簡易キットで判定できます)。作れない方や摂取量が少ない方はサプリで補助を検討します。

Q.骨や関節にはどう役立ちますか?

A.骨粗鬆症の予防サポート、関節・靭帯・滑膜の保護が期待されます。
進行してからより“早めの開始”が効果的です。

Q.男性にも効果はありますか

A.前立腺・下部尿路症状の軽減の可能性や骨代謝改善の報告はあるようですが。実際のところ臨床データがまだまだ不十分で、はっきりしたエビデンスは得られていません。

Q.注意が必要な人はどんな人ですか?他のお薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

A.妊娠・授乳中、ホルモン感受性腫瘍の既往、抗凝固薬などたくさんのお薬を飲んでいる方は必ず主治医に相談するようにしてください。

まとめ

エクオールは、大豆イソフラボンから腸内細菌によって生成される成分で、エストロゲンに似た作用を持ちます。

更年期になるとエストロゲンの低下により、自律神経の乱れ、骨密度の低下、皮膚の老化、関節や腱の炎症が進行しやすくなります。

エクオールは、これらの症状を予防・緩和する効果が期待されています。

エクオールの主な作用

  • 更年期症状の軽減のぼせ・発汗の改善
  • 骨密度の維持破骨細胞の働きを抑制し、骨粗鬆症の予防
  • 皮膚のハリ・潤いを保つコラーゲン・ヒアルロン酸の生成促進
  • 紫外線ダメージの軽減シミ・くすみの予防
  • 関節や腱の健康維持へバーデン結節・ブシャール結節、ばね指などの予防

エクオールの摂取方法

  • 大豆製品の摂取豆腐・納豆・味噌など
  • 大豆製品を摂取できない、体内でエクオールを生成できない場合はサプリメントで補う(S-エクオール1日10mg推奨

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

エクオールは更年期症状のケアに加え、骨粗鬆症の予防や関節・靱帯・滑膜の炎症抑制、軟骨の保護といった作用が期待できます。
ただし病状が進み、関節や骨の構造変化が強くなるほど効果は限定的と報告されています。
とても期待できるものですが、万能薬でもありません。
だからこそ、睡眠・栄養・運動など土台しっかりさせたうえでしっかり予防し、早めの検査を心がけることが大切です
エクオールだけでなく、骨粗鬆症や指や手首の不調などを繰り返す方はいつでも相談ください。
ササモト整形外科ではあなたに最適な治療を提案させていただきます。

参考文献

  • Zhang Y, Zhuang Z, Han Q, et al.
S-Equol alleviates osteoarthritis in ovariectomized rats by inhibiting NF-κB pathway and chondrocyte apoptosis. Front Pharmacol. 2022;13:958832.
  • Jäger B, Krammer M, Putz P, et al.
Combined supplementation with equol and resveratrol improves bone turnover markers in postmenopausal women: a randomized controlled trial. Nutrients. 2023;15(15):3426.
  • Qiu T, Li Z, Zhao Y, et al.
S-Equol promotes osteoblast differentiation and prevents bone loss in diabetic osteoporosis. Front Nutr. 2022;9:986192.
  • Huang Y, Jiang Y, Xie L, et al.
S-Equol ameliorates menopausal osteoarthritis in rats by reducing oxidative stress and inhibiting cartilage degradation. Nutrients. 2024;16(14):2364.
  • Corbi G, et al. Int J Mol Sci. 2023.
  • 株式会社カゴメ・輝きプロジェクト編集部.
指が痛いのは更年期のせい? 原因や対処法について解説!
輝きプロジェクト. 2024年7月5日公開.
    URL: https://www.kagayaki-project.jp/lifestyle/study/2024-0705/
  • 株式会社ハルメクホールディングス.
更年期のしびれの原因は?片側だけの場合は危険?
ハルメクWEB. 2023年8月3日公開.
    URL: https://halmek.co.jp/beauty/c/menopause/7635

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)

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