へバーデン結節・ブシャール結節とは?—「指の関節が腫れて痛い…」 それ、指の関節がすり減っているサインかも?

「指の関節が腫れて痛む…これは何?」

  • 指の第1関節や第2関節が腫れて、動かすと痛みを感じる
  • 関節がゴツゴツしてきて、少しずつ変形している気がする
  • 指を動かすと違和感があり、朝起きたときにこわばる感じがする
  • 手を使う動作(つまむ・握る)がしにくくなる

このような症状がある場合、へバーデン結節またはブシャール結節の可能性があります。

これらは、指の関節に起こる変形性関節症の一種で、関節の軟骨がすり減ることで炎症が起こり、痛みや変形を引き起こす疾患です。

どちらも基本的には同じ疾患ですが、発症する関節が異なるだけです。

  • へバーデン結節:指先の関節(DIP関節いわゆる第1関節)に発症
  • ブシャール結節:指の真ん中の関節(PIP関節いわゆる第2関節)に発症

進行すると、指が動かしにくくなり、関節の変形が進んでしまうこともあるため、早めの治療とケアが大切です。

へバーデン結節・ブシャール結節とは?

指の関節に起こる変形性関節症

関節には、骨と骨の間でクッションの役割を果たす「軟骨」が存在し、スムーズに動くようになっています。

しかし、長年の使用や加齢によって軟骨がすり減ると、関節の表面が傷つき、炎症が起こります。

この炎症が続くと、関節内にある滑膜という膜が腫れたり、トゲのような骨の変形(骨棘)ができたりして、関節の変形が進行していきます。関節の大きさによってはたくさんの関節水腫が溜まることもあります。

へバーデン結節・ブシャール結節は、指の関節に起こる変形性関節症の一種で、関節がゴツゴツとした形になり、動かしにくくなるのが特徴です。

  • へバーデン結節:指先の関節(DIP関節いわゆる第1関節)に発症
  • ブシャール結節:指の真ん中の関節(PIP関節いわゆる第2関節)に発症

関節の変形が進行すると、関節が硬くなってしまい、曲げ伸ばしがしにくくなったり、痛みを伴うようになります。

ちなみに関節リウマチでもPIP関節(いわゆる第2関節)の痛みが出ることがあります。ブシャール結節では関節の変形(骨が増えてゴツゴツする)が起こるのに対して関節リウマチでは関節の破壊が進むため著名な変形は起こりません。

なぜへバーデン結節・ブシャール結節が起こるのか?

1. ホルモンバランスの変化

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは関節を守る重要なホルモンと言われています。エストロゲンの働きには以下のようなものがあります。

  • 滑膜(関節の内側を覆う膜)の炎症を抑える:関節内には「滑膜」という組織があり、ここで関節液を分泌して関節の動きを滑らかに保っています。エストロゲンは滑膜の炎症を抑える作用があり、関節や腱の腫れや痛みを予防しています。
  • 軟骨を保護し、関節軟骨がすり減るのを防ぐ:エストロゲンは関節の軟骨細胞を守り、軟骨のすり減りを抑える働きがあります。
  • コラーゲンや骨密度の維持:関節周囲の靭帯や軟骨の主成分であるコラーゲンの生成を助け、骨の代謝で重要な破骨細胞の作用を抑えることで骨密度を維持する働きもあります。

へバーデン結節やブシャール結節は特に40〜50代以降の女性に圧倒的に多いのが特徴です。

女性は閉経後にホルモンバランスが変化し、エストロゲンの量が激減します。そのため関節のさまざまな保護機能が低下するため、発症しやすくなるといわれています。

2. 遺伝的な要因

「母や祖母も指が変形していた」という方は要注意です。へバーデン結節・ブシャール結節には遺伝的な要因が関与しているとも考えられ、家族に同じ症状がある場合は発症リスクが高いとされています。

3. 指をよく使う習慣

指を頻繁に使う仕事や趣味を持つ人は、関節に負担がかかり、軟骨の摩耗が進みやすくなると言われています。

へバーデン結節・ブシャール結節の症状

  • 指の第1関節や第2関節が腫れて、動かすと痛みを感じる
  • 関節がゴツゴツしてきて、少しずつ変形している気がする
  • 指を動かすと違和感があり、朝起きたときにこわばる感じがする
  • 手を使う動作(つまむ・握る)がしにくくなる

進行すると、関節の可動域が狭くなり、細かい作業(ボタンを留める、箸を使うなど)がしにくくなることもあります。

へバーデン結節・ブシャール結節の検査

1. 画像検査(レントゲン・エコー)

レントゲンを撮影し、関節の変形や軟骨のすり減りの程度を確認します。
超音波検査(エコー)で、炎症の有無や腱の損傷を評価します。

2. 身体診察(徒手検査)

関節を押したときの痛みの有無を確認します。
関節の可動域をチェックし、動かしにくさがあるかを評価します。

へバーデン結節・ブシャール結節の治療

1. 保存療法(手術をしない治療)

  • 痛みがあるときは、消炎鎮痛剤(NSAIDs)を使用して炎症を抑える。
  • エストロゲンと同じような作用を持つエクオールを使用し進行を予防する。
  • 装具やサポーターを使って、関節の負担を軽減する。
  • リハビリやストレッチで関節の可動域を維持する。

2. 手術療法(重症例)

  • 保存療法で改善しない場合、関節形成術や関節固定術を検討する。

手術は最終手段となりますが、関節の変形が進んでしまった場合、痛みを取り除くために選択されることもあります。

しかし、関節の動きを制限する術式もあります。痛みがあまりも強かったり、美容の面で強く希望される以外ではその症状に応じて手術をすべきかどうかしっかり説明し対応します。

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

へバーデン結節・ブシャール結節は、一度発症すると完全に元の状態に戻ることは難しい疾患ですが、進行を遅らせることは可能です。

最近話題のエクオールも変形が進行した痛みに対しては効果が乏しくなることも報告されています。

「ただの指の痛みだから…」と放置せず、できるだけ早い段階で適切な対策をとることが大切です。

特に、手をよく使う人や家族に同じ症状がある方は、予防のために関節の負担を減らす工夫を取り入れてみましょう。

また、ブシャール結節なのか関節リウマチなのか迷う方もたくさんいると思いますので、気になったり心配になった方は一度詳しい検査をすることを強くお勧めします。

参考文献

  • Kumar NM, Hafezi-Nejad N, Guermazi A, et al.
Association of quantitative and topographic assessment of Heberden’s nodes with knee osteoarthritis: data from the Osteoarthritis Initiative. Arthritis Rheumatol. 2018;70(8):1234–1239.
  • Kalichman L, Kobyliansky E.
Hand osteoarthritis: radiographic features and genetic factors. Skeletal Radiol. 2009;38(9):861–867.
  • Bagis S, Sahin G, Yapici Y, et al.
Hand osteoarthritis: correlation of clinical and radiological findings. Clin Rheumatol. 2003;22(6):420–424.
  • Rees F, Doherty M, Lanyon P, et al.
Distribution of finger nodes and their association with underlying radiographic features of osteoarthritis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64(6):901–906. 

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)