――それは“未来の骨折リスク”を見える化することです
はじめに
「骨年齢って、聞いたことありますか?」
肌年齢や血管年齢と同じように、骨にも“年齢”があります。
それを数字で見える化できるのが骨密度検査です。
いま痛みがなくても、骨は確実に少しずつ変化します。
何か起きてから後悔する前に、いまの自分の骨年齢を知っておく
——それが、将来の骨折を防ぐいちばん確かな近道です。
骨年齢=いまの骨の強さを示す指標
骨密度は、骨の中にどれだけミネラル(カルシウムなど)が含まれているかを数値で表したものです。
値が高いほど折れにくく、低いほど折れやすい傾向があります。
骨密度は年齢、ホルモンの変化、体重、運動量、喫煙・飲酒歴、薬(ステロイド)などの様々な影響を受けて変化します。
だからこそ、いまの骨密度を測る=現在の骨の強さ(骨年齢)を知ることが、骨粗鬆症の予防と治療を始める第一歩になります。
いつ測る?——“年齢+リスク”で考える
- 女性:60歳を目安に
- 男性:70歳以上や、上記のリスクがある方は検討
- 身長が縮んできた、背中が丸くなった、尻もちで背中や腰に強い痛みが出た
やせ型、家族歴、喫煙・飲酒歴、ステロイド内服歴などがあれば性別を問わず40代や50代でも一度は確認することを強くお勧めします。
背が縮んだような気がしたり、強い痛みがある場合は背骨の骨折の可能性があります。一度受診し精査をしてください。
骨密度検査ってどんなもの?
レントゲンの容量で骨をスキャンします。
検査に伴う痛みは全くなく、なんの準備も要りません。
結果は下のようにいくつかの項目で数値化され、今のあなたの骨の状態が確認できます。(正確にいうと年齢では表現されません。どの程度基準から差があるかという表現になります。)
- Tスコア:骨の硬さが若年成人平均からどれくらいずれているか。
- Zスコア:骨の硬さが同年代平均からどれくらいずれているか。
- YAM値:若年成人平均と比べて何割の骨の硬さか。
治療は薬だけではありません
骨粗鬆症の治療は、
- 1.生活習慣(たんぱく質、カルシウム、ビタミンD、適度な運動、禁煙、節酒など)
- 2.転倒予防(住環境の見直し、バランス訓練、筋力訓練、転倒予防の意識づけなど)
- 3.薬物療法(骨を壊す働きを抑える薬、骨を作る働きを高める薬など)
の三本柱です。
当院では状態に合わせて無理なく続けられる選択を一緒に考えます。
治療を始めたら、定期的に骨密度を再確認して効果を見える化します。
数字で進捗がわかるから、続けやすいのが特徴です。
よくある質問(Q&A)
Q.痛くないのに検査は必要ですか?
A.はい。
骨粗鬆症は静かに進み“いつの間にか骨折”で気づくことが少なくありません。
骨粗鬆症は予防が何より重要です。痛みが出る前に骨密度を測ることが最大の予防なんです。
Q.骨密度検査は、かかと(超音波)で行う検査だけで十分ですか?
A.いいえ。
みなさんの中には検診などで検査をしたことがある人がいるかもしれません。
踵での検査はスクリーニングには有用と言われていますが、結果にばらつきがあるとも言われているんです。
骨粗鬆症の診断と治療方針を決めるためにはしっかりと骨密度検査(DEXA法)で確かめましょう。
当院ではDEXA法での骨密度検査を行なっています。
Q.ちゃんと運動してて元気なので検査は必要ないですよね?
A.いいえ。
骨密度を維持・向上させる目的で運動はとても良い習慣です。
しかし運動していても骨密度が低い方はいます。
一度は骨密度検査を行い数値化することをおすすめします。
Q.薬は一生飲み続けるのですか?
A.いいえ。
治療は病状や骨折リスクに合わせて期間と強さを調整します。
経過によっては途中で休薬することもありますし、検査したとしても薬を使用するほど低くない場合もあります。
その場合は運動歴、既往歴、骨折歴などを総合的に判断し今後の方針を医師やスタッフと決めていきます。
まずはぜひ検査をしてみてください。
Q.骨粗鬆症治療をする上で何か注意することはありますか?
A.はい。
安全に治療を進めるため、最近の歯科治療・抜歯の予定、直近の採血結果、お薬手帳、アレルギー歴などを確認します。
診察時にお持ちでなくても問題ありません。もしご用意があれば、教えていただけると助かります。
ササモト整形外科での検査の流れ
1.問診
歯科治療歴、生活歴、既往歴、現在飲んでいるお薬の内容などを確認します
2.検査
骨密度検査、必要に合わせて採血検査を行います
3.結果説明
あなたの骨年齢をわかりやすくお話します
4.今後の方針について
患者さんの生活状態や運動歴に合わせて今後の方針を一緒に考え、最適な治療(食事・運動・転倒予防・必要に応じ薬など)を提案します。
5.フォローアップ
定期的な検査を提案しています。何より続けられるようにスタッフも一緒にしっかり支援します。
まずは“今日の一歩”から
食事:タンパク質を1品足す(卵・豆腐・魚・肉)など
運動:外で5分歩く+安全なところで簡単な片脚立ち
生活での予防:寝室や廊下の段差・照明を見直す
など、小さな一歩の積み重ねが、骨年齢を守ります。
まとめ——検査し、見える化することで“折れない未来”へ
いつまでもご自分の足でしっかり歩けるよう、みなさんの毎日をササモト整形外科で支えます
骨年齢を知る=未来の骨折リスクを見える化すること。
数分の検査であなたの現在地がわかれば、あなたに合った対策が今日から始められます。
「どこも痛くないから、まだいいや」ではなく、骨粗鬆症加療の基本は“何か起こる前の備え”です。
ご自身やご家族の健康寿命のために、自分の足で歩き続けるために、まずは一度、骨年齢を確かめてみませんか?
専門医からの一言

“骨年齢”はあくまでわかりやすい言い方で、実際には骨密度という数値で骨の強さを評価します。いま痛みがなくても、骨は少しずつ変化します。転んだ拍子の骨折は、通院・家事・お仕事・趣味――日常の「当たり前」を一気に奪い、あなたの笑顔も確実に奪います。だからこそ、痛くなる前・折れる前に一度だけでも骨密度を測り、今の状態を把握してほしいんです。
検査は数分で終わり、痛みはありません。結果はわかりやすい言葉でお伝えし、食事・運動・転倒予防・お薬など最適な治療を提案します。何より大切なことは無理をせず、でも確実に続くプランを提供することだと思っています。
「めんどくさい」「なんか検査はこわい」「もし悪かったらどうしよう」――そんな気持ち、よくわかります。でももし今、「自分は対象かな?」「いつから始めればいい?」と少しでも迷いがあるなら、それが受診の合図です。相談だけでもちろん構いません。あなたの生活、家族、やりたいこと――守りたいものがあるなら、笑顔が増える未来を私たちと一緒につくりましょう。
参考文献
- Deshpande N, Fenelon C, Moynihan S, Denvir K, Coughlan R. Alternatives to DEXA for the assessment of bone density: a systematic review. Osteoporos Int. 2023;34(5):959‑976.
- Papa MV, Carter CB, Sant’Anna L, et al. Correlation between bone density measurements on forearm DXA and bone density at lumbar spine/hip: a meta‑analysis. BMC Musculoskeletal Disorders. 2025;26:134. doi:10.1186/s12891‑025‑08376‑7.
- Crandall CJ, Cauley JA, Jackson RD, et al. Serial Bone Density Measurement and Incident Fracture Risk: A longitudinal cohort study. JAMA Intern Med. 2020;180(6):785‑793.






