腰部脊柱管狭窄症とは?—「歩くと足がしびれて休みたくなる…」それ、神経が圧迫されているかも?

「歩いたり背を伸ばすと足が痛い、しびれる…これは何?」

  • 腰が痛い、お尻から太ももの裏やふくらはぎに痛みやだるさがある
  • 歩いていると足がしびれたり、痛くなったりして休みたくなる
  • 休んで少しするとまた歩けるようになる
  • 腰を反らすと足のしびれが強くなる
  • 前かがみであれば歩くのが楽になる(買い物カートを押せば買い物が楽)
  • 自転車には問題なく乗れるのに、歩くとすぐに足がしびれる

このような症状がある場合、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)の可能性があります。

腰部脊柱管狭窄症は、背骨の中を通る神経の通り道(脊柱管)が何らかの原因で狭くなり、神経が圧迫されることで、腰痛だけでなく足のしびれや歩行障害が起こる疾患です。

特徴的な症状として、「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれる現象があります。これは、しばらく歩くと足がしびれたり痛くなったりするが、少し休むとまた歩けるようになるというものです。

腰部脊柱管狭窄症とは?

私たちの背骨(脊椎)の中には、脊柱管と呼ばれるトンネル状の構造があり、その中を脊髄(せきずい)や神経が通っています。

しかし、加齢や腰の負担が積み重なることで、様々な原因で脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されると、足のしびれや痛みが発生するのです。

腰部脊柱管狭窄症は、50歳以上の方に多く、加齢に伴う「背骨の変形」や「椎間板の変性」「靭帯の肥厚」によって発症しやすくなります。

また、長年の姿勢の悪さや過度の運動・労働も、発症のリスクを高める要因となります。

なぜ腰部脊柱管狭窄症が起こるのか?

1. 加齢による脊椎や軟部組織の変形

  • 加齢とともに背骨そのものに変形が起こる(変形性腰椎症)
  • 椎間板に変性が起こることで腫れたり、クッション性が低下する
  • 椎間板のクッション性が低下することで椎間(脊骨と背骨の間)に負担がかかり、その結果背骨を支えている靭帯が厚く腫れる

上記のように骨や椎間板、靭帯など様々な原因で神経の通り道が狭くなることで発症します。

脊柱管狭窄症は言葉通り脊柱管が狭くなる病態です。大きく分類すれば以下のような疾患でも腰部脊柱管狭窄症の原因になります。

2.椎間板ヘルニア

椎間板が膨らんだり、飛び出したりすることで、神経の通り道である「脊柱管」が狭くなってしまう疾患を「腰椎椎間板ヘルニア」といいます(詳しくは「腰椎椎間板ヘルニア」をご覧ください)。

過去に腰椎椎間板ヘルニアを経験したことのある方では、椎間板自体がすでに傷んでいることが多く、本来のクッション機能が低下しているため、椎間にかかる負担が大きくなりやすい状態です。

そのため、将来的に脊柱管狭窄症を発症するリスクが高まることが報告されています。椎間板が変性して膨らむと、神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されやすくなります。

3.腰椎すべり症(腰椎分離すべり症)

腰の骨(腰椎)が本来の正しい位置から前方または後方にずれてしまう状態を「腰椎すべり症」といいます。

この「ずれ」は、加齢やスポーツ、外傷などが原因で、椎間板や靭帯がゆるんだり、関節の変形が進行したりすることで起こります。

骨がずれることで、神経の通り道に圧迫がかかったり、無理な力が加わった靭帯が腫れて神経を刺激したりするため、腰の痛みや足のしびれ、重だるさなどの症状が現れるようになります。

腰部脊柱管狭窄症の症状

  • 腰が痛い、お尻から太ももの裏やふくらはぎに痛みやだるさがある
  • 歩いていると足がしびれたり、痛くなったりして休みたくなる
  • 休んで少しするとまた歩けるようになる
  • 腰を反らすと足のしびれが強くなる
  • 前かがみであれば歩くのが楽になる(買い物カートを押せば買い物が楽)
  • 自転車には問題なく乗れるのに、歩くとすぐに足がしびれる
  • 立っているだけ(台所の作業など)でも足がだるくなったり、しびれる

特徴的なのは、歩くと症状が悪化し、休むと改善する「間欠性跛行」です。また、前かがみになると脊柱管が広がり、神経の圧迫が軽減されるため、買い物カートを押しながら歩くと楽に感じる人が多かったり、自転車であれば痛みなく乗れるという人もいます。

神経の狭窄が長期間続いたり、突然狭窄が強くなることで症状が進行すると足の力が入りにくくなったり、排尿排便に異常をきたすことがあります。

腰部脊柱管狭窄症の検査

1. 画像検査(レントゲン・MRI)

  • レントゲン(X線):骨の変形や狭窄がないかを確認
  • MRI:椎間板や靭帯、神経の状態を詳しく調べ、狭窄の有無を確認(必要に応じて)

2. 身体診察(徒手検査)

筋力低下や痛みの部位、神経痛の程度などを評価します。

腰部脊柱管狭窄症の治療

1. 保存療法

腰部脊柱管狭窄症では、腰痛や神経の痛み・炎症を抑えることが治療のポイントです。

消炎鎮痛剤や神経の興奮を抑える薬、神経への血流を増やす薬などを調節したり、痛みが強い場合には神経ブロック注射やトリガーポイント注射を組み合わせることで神経痛だけでなく腰回りの症状も和らげることができます。

2. リハビリ・運動療法

  • 腰の負担を減らすためのストレッチや体幹トレーニングを行う
  • 適度な運動で血流を促し、回復を早める

腰部脊柱管狭窄症の予防や再発防止には、体幹をしっかりさせることで背骨に負担をかけさせないようにすることが重要です。

ストレッチや筋力トレーニングを行うことで、再発を防ぐことができます。また、筋肉を柔らかくほぐす目的でもリハビリをすることが必要とされています。

3. 手術療法(保存療法で改善しない場合)

  • 保存加療で改善しない場合
  • 痛み、痺れがひどく日常生活に支障が出てしまう場合
  • 間欠性跛行が進行し50メートルほどしか連続で歩けなくなってしまった場合
  • 麻痺、膀胱直腸障害が出現した場合

お薬や注射を継続しても痛みの改善が見られない場合や、症状が強くなることで日常生活を過ごすのが困難になってきた場合、足の麻痺が出現した場合、膀胱直腸障害が出現下場合は手術加療の検討が必要です。

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

腰部脊柱管狭窄症は、年齢とともにゆっくり進行することが多い病気ですが、「もう歳だから…」とあきらめる必要はまったくありません。

適切な治療やリハビリを行えば、つらい症状をやわらげて、日常生活を快適に過ごすことが十分に可能です。

「最近、腰の痛みに加えて足がしびれるようになってきた…」「歩くとすぐに休みたくなる…」
そんな症状を感じたら、できるだけ早めにご相談ください。

少しの工夫と治療の積み重ねで、日々の暮らしはもっと楽になります。一緒に無理なくできることを探していきましょう。

参考文献

  • Minetama M, Kawakami M, Teraguchi M, et al.
Effect of exercise therapy on lumbar spinal stenosis: a randomized controlled trial.
Spine (Phila Pa 1976). 2019 Jan 1;44(1):E25–E32.
  • 清水大輔ほか.腰部脊柱管狭窄症に対する運動療法の効果-臨床症状と歩行能力の変化に着目して-.日本理学療法学術大会.2023;25:47.

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)