マレット指とは?—指先が伸びなくなったら要注意!

「指をぶつけたら、先が伸びなくなった…これって何?」

指の先を何かにぶつけた後、

  • 指先が伸びなくなった
  • 痛みや腫れがある
  • そのままにしていたら、指の形が変わってきた

こんな症状に心当たりがある方、もしかすると**マレット指(マレットフィンガー)**かもしれません。

マレット指とは、指先(DIP関節、いわゆる第一関節)が伸びなくなり、垂れ下がった状態になる指のケガです。

日常生活の中で、ボールをキャッチしたり、ドアにぶつけたりして起こることが多いですが、実は、骨折を伴う場合と、腱の損傷だけのタイプの2種類があるのです。

「単なる突き指かと思っていたら、治らない…」
そんなときは、適切な治療をしないと、指の形が変わってしまうこともあるため注意が必要です!

マレット指とは?

マレット指(mallet finger)は、指の第一関節(DIP関節)が伸びなくなるケガです。

指の骨の付け根には、**指を伸ばすための腱(伸筋腱)**がついており、それぞれが強調運動することで指の曲げ伸ばしを可能にしています。

この伸筋腱が損傷すると、指先を伸ばすことができなくなります。

マレット指には、2つのタイプがあります。

1. 骨性マレット指(骨折を伴うタイプ)

  • 指の伸ばす腱が骨ごと引き剥がされる
  • 子どもやスポーツ選手に多い
  • レントゲンを撮ると、小さな骨片が見える

2. 腱性マレット指(腱が断裂するタイプ)

  • 骨には異常がないが、腱が断裂して指が伸びなくなる
  • 高齢者や、指をよく使う職業(料理人、職人など)の方に多い

「骨折があるのとないのとで、治療が変わるの?」

そうなんです!骨性マレット指は、骨のズレが大きい場合、手術が必要になることもあるため、適切な診断を受けることがとても大切です。

なぜマレット指になるの?

マレット指は、指先に強い力が加わることで発生します。
例えば、こんな場面で起こることが多いです。

1. スポーツでのケガ

バスケットボール、バレーボール、野球などで、
ボールが指先に強く当たることで伸筋腱が断裂します。

特に、ボールをキャッチするときに指を突き指するケースが多いです。

2. 物にぶつける・引っかかる

  • ドアや引き出しに指を挟んだ
  • 重いものを落としたときに指先をぶつけた
  • 布団をめくるときに引っかかる(高齢者に多い)

3. 加齢による腱の弱化

高齢になると、指を伸ばす腱(伸筋腱)が弱くなり、少しの衝撃でも断裂しやすくなることがあります。

特に、関節リウマチなどで腱がもろくなっている方は、軽い負荷でもマレット指を起こすことがあります。

どんな症状が出るの?

マレット指は、指を動かそうとするとすぐに異変に気づきます。「指先が自分の意思で伸びなくなる」のが最も特徴的な症状です。

初期症状(発症直後)

  • 指の先がダラッと垂れ下がる
  • 指を伸ばそうとしても、先端が伸びない
  • 指先が腫れたり、赤くなったりする

数日後(治療せずに放置した場合)

  • 痛みは軽減するが、指の変形が残る
  • 日常生活で不便を感じる(ボタンを留める、ペンを持つのが難しい)

「痛みがないから大丈夫」と思って放置すると、指が変形して治らなくなることがあるので注意が必要です!

どうやって診断するの?

1. 画像検査(レントゲン)

  • 骨折(骨性マレット指)があるかを確認
  • 骨片のズレがないかチェックする

2. 指の動きの確認

  • 指を伸ばそうとしても、DIP関節だけ伸びないかをチェック
  • PIP関節(第二関節)を動かしたときにDIP関節の変形がないかを見る

どうやって治療するの?

「指が伸びないけど、放っておけば治る?」

いいえ、適切な治療をしなければ、変形が残ったまま治らなくなってしまいます!

1. 保存療法(装具で固定する治療)

軽度の骨性マレット指や、腱性マレット指の場合、装具での治療が可能です。

  • DIP関節(指の第一関節)を伸ばした状態で装具を装着し、6〜8週間固定する
  • 固定中は関節が曲がらないように注意が必要!

2. 手術療法(重症の場合)

次のようなケースでは手術が必要になることがあります。

  • 骨折のズレが大きい(関節の1/3以上を占める)
  • 装具での治療で改善しない場合

手術では、ワイヤーやスクリューで固定し、骨や腱を修復します。

「手術と聞くと不安…」という方もいるかもしれませんが、
適切な治療を行えば、指の機能をしっかり取り戻すことができます。

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

「指が伸びなくなったけど、痛くないし放っておいても大丈夫かな?」そんな風に思っていませんか?

マレット指は、適切な治療をしないと、指が変形したまま治ってしまい、日常生活で不便を感じることが増えてしまいます。

装具で固定するだけで改善する場合も多いですが、適切な治療をしないと、手術が必要になることもあります。

痛みがなくても、指が伸びなくなったら早めに受診しましょう。「このくらい大丈夫」と思わず、一緒に指の機能を取り戻しましょう!

参考文献

  • Yue Z, Mo Y, Xiong Z, Tang Y. New technique for the treatment of fresh bony mallet finger: A retrospective case series study. Front Surg. 2023;10:1127827.
  • Peng C, Huang RW, Chen SH, et al. Comparative outcomes between surgical treatment and orthosis splint for mallet finger: a systematic review and meta-analysis. J Plast Surg Hand Surg. 2023;57(1-6):54–63.
  • Cheung JPY, Fung B, Ip WY. Review on mallet finger treatment. Hand Surg. 2012;17(3):439–447.

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)