「足首が痛い…最近、歩きにくくなってきた?」
- 歩き始めると足首がズキッと痛む
- 階段の昇り降りがつらい
- 靴のすり減り方が左右で違う
そんな症状に心当たりはありませんか?
もしかすると、それは変形性足関節症かもしれません。この病気は、足首の関節(距腿関節:きょたいかんせつ)の軟骨がすり減り、変形を伴いながら進行する疾患です。
「変形性関節症って、膝とか股関節の話じゃないの?」と思う方もいるかもしれませんね。確かに膝や股関節の変形はよく知られていますが、足首の関節も同じようにすり減ることがあります。
特に、過去に足首を捻挫したことがある方や、長年スポーツをしてきた方は要注意。足首の痛みが慢性化し、進行すると手術が必要になるケースもあります。
足首の痛みや違和感を感じたら、早めに治療を始めることが大切です!
変形性足関節症とは?
関節には、骨と骨の間でクッションの役割を果たす「軟骨」が存在し、スムーズに動くようになっています。

しかし、長年の使用や加齢によって軟骨がすり減ると、関節の表面が傷つき、炎症が起こります。
この炎症が続くと、関節内にある滑膜という膜が腫れたり、トゲのような骨の変形(骨棘)ができたりして、関節の変形が進行していきます。
関節の大きさによってはたくさんの関節水腫が溜まることもあります。

変形性足関節症は、足首の軟骨がすり減り、関節の変形や痛みを引き起こす疾患です。
変形性膝関節症などと同様に、年齢とともに進行することが多いですが、足首の場合、過去のケガ(捻挫や骨折)による影響が大きいのが特徴です。
「捻挫なら昔よくやったけど、もう治ったんじゃない?」そう思われるかもしれませんが、捻挫は関節の安定性を支える靭帯や軟骨にダメージを与え、時間が経ってから変形を引き起こすことがあるのです。


なぜ変形性足関節症になるの?(原因)
1. 加齢(関節の老化)
関節軟骨は、年齢とともに摩耗しやすくなります。特に50歳以上になると、軟骨の再生能力が低下し、少しずつ関節のすり減りが進んでしまいます。
2. 足首の捻挫や骨折の後遺症
「若い頃に何度も捻挫した」「足首の骨折を経験したことがある」という方は要注意! 関節にダメージを受けると、軟骨がすり減りやすくなり、将来的に変形性足関節症を引き起こす可能性が高くなります。
3. 長年のスポーツや仕事による負担
- ジャンプやダッシュが多いスポーツ(バスケットボール、サッカー、陸上競技)
- 立ち仕事が多い職業(建設業、接客業、看護師など)
こうした負担が続くと、足首の軟骨が少しずつすり減り、変形が進んでしまいます。
4. 足の形(扁平足・凹足)
「足の形が変わるだけで関節症になるの?」と思うかもしれませんが、扁平足や凹足の方は、足首にかかる負担が偏りやすく、変形性足関節症になりやすいことが分かっています。
どんな症状が出るの?
変形性足関節症は、徐々に進行するため、最初は「あれ?なんか足首が重いな…」程度の違和感から始まります。
初期(軽度)
- 歩き始めると足首に違和感がある
- 長時間歩くと足首がだるくなる
- 朝起きたときや、動き始めに足首がこわばる
中期(中等度)
- 足首が腫れたり、熱をもつことがある
- 足首を動かすとゴリゴリ音がする(軟骨がすり減ったサイン)
- 立ち上がるときにズキッと痛む
進行期(重度)
- 足首が変形してきて、動きが悪くなる
- 痛みで歩くのが困難になる
- 関節がほとんど動かなくなる
こうなると、日常生活にも大きな支障が出てしまいます。
「まだ大丈夫かな?」と思っているうちに進行することが多いので、痛みが出始めたら、早めの治療が大切です!
どうやって診断するの?
診察では、まず足首の動きや腫れの状態をチェックします。
その上で、次のような検査を行います。
1. 画像検査(レントゲン・エコー)
- 関節のすり減り具合、骨の変形を確認
- 関節の隙間が狭くなっていないかをチェック
2. 歩行評価・関節の動きの確認
- 歩き方に異常がないか(片足に負担がかかっていないか)
- 足首の可動域がどの程度残っているか
どうやって治療するの?(治療・対策)
「足首の痛みは我慢するしかない?」
そんなことはありません。変形性足関節症の治療は、痛みをコントロールしながら、関節の動きをできるだけ維持することが目的です。
1. 保存療法(手術をしない治療)
- 足に合った靴やインソールの使用
- ストレッチやリハビリで足首を柔らかくする
- 痛みに対して消炎鎮痛薬(湿布・内服)を使用
- 関節内注射(ヒアルロン酸やステロイド)で炎症を抑える
2. 手術療法(症状が重い場合)
- 関節固定術(関節を動かなくして痛みをなくす)
- 人工関節置換術(すり減った関節を人工のものに置き換える)
「手術しか方法がないの?」と不安になるかもしれませんが、軽度〜中等度であれば、適切な治療を行うことで痛みをコントロールできることが多いです。
専門医からの一言


「昔の捻挫が原因で足首が痛くなるなんて思わなかった…」実は、こういう方はとても多いです。
足首の痛みを放置すると、関節が変形してしまい、歩くことが難しくなることもあります。
「最近足首が痛い」「歩きにくくなってきた」と感じたら、早めに受診し、一緒に足の健康を守っていきましょう!
参考文献
- Saltzman CL, et al. “Etiology and pathogenesis of osteoarthritis of the foot and ankle.” Foot Ankle Clin, 2003.
- Goldberg AJ, et al. “Management of ankle osteoarthritis: Current state and future directions.” J Am Acad Orthop Surg, 2019.
この記事の監修者について
学歴・経歴
- 金沢医科大学 医学部卒業
- 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
- 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
- 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開
資格・専門領域
- 医学博士
- 日本整形外科学会認定専門医
- 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
- 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力
診療に対する想い
患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。 科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。 「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。
趣味・活動
- バレーボール歴20年以上
- ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)