「朝、肩や腰がこわばって動きにくい…年のせい?」
そんな風に感じたことはありませんか?特に50歳以上の方で、急に肩や腰の痛みが強くなり、朝起きたときに動きづらいと感じる場合、それはリウマチ性多発筋痛症(PMR)かもしれません。
この病気は、免疫の異常によって筋肉の周囲に炎症が起こることで発症します。
ただ、年齢のせいだと思い込んで放置してしまう方が多いのも事実。でも、適切な治療をすれば症状を和らげ、普通の日常生活を取り戻せます。「もしかして?」と思ったら、ぜひ最後まで読んでみてください。
リウマチ性多発筋痛症とは?
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、自己免疫の異常によって全身に炎症が起こる病気です。
名前に「筋痛症」とありますが、実際に筋肉そのものが障害されるわけではなく、筋肉の周囲にある滑液包(かつえきほう)や関節周囲の軟部組織に炎症が起きることで痛みが出ると考えられています。
一般的には関節リウマチとは異なる疾患ですが、初期症状が似ているため間違われることもあります。
しかし、リウマチ性多発筋痛症では関節破壊は起こらず、筋肉の「痛みとこわばり」が主な症状で、ステロイド(副腎皮質ホルモン)に非常に良く反応するという特徴があります。
なぜ起こるの?
「どうしてこんな痛みが起こるの?」と思いますよね。実は、リウマチ性多発筋痛症のはっきりした原因はまだ分かっていません。
ただ、今のところ次のような要因が関係していると考えられています。
1. 免疫システムの異常
本来は体を守るはずの免疫が、誤って筋肉や関節の周囲を攻撃してしまうことで炎症が起こります。
2. 遺伝的要因
「家族にリウマチの人がいると、なりやすい?」 そうですね、一部の遺伝的な要素が関係している可能性があると言われています。
3. ウイルス感染との関連
「風邪やウイルスが引き金になることもあるの?」 まだはっきりとは分かっていませんが、ウイルス感染が免疫の異常を引き起こし、発症のきっかけになる可能性もあります。
どんな症状が出るの?
「肩や腰が痛い」と言っても、単なる肩こりや疲れとは違います。リウマチ性多発筋痛症には、こんな特徴的な症状があります。
最初のサイン(発症初期)
- なんとなく肩や腰が痛い
- 疲れやすい、体がだるい
- ちょっと動かしただけで違和感
「最近、朝がしんどいな…」と感じたら要注意。
症状が進行すると
- 肩や首、腰がガチガチにこわばる
- 朝1時間以上、動きにくくなる
- 寝返りを打つだけで痛い
- 微熱が続く、体重が減る
さらに悪化すると
- 腕を上げるのもつらくなる
- 椅子から立ち上がるのに苦労する
- 夜も痛みで目が覚める
この段階になると、日常生活にも支障が出てしまいます。
リウマチ性多発筋痛症の検査は?
「もしかして?」と思ったら、病院で血液検査や画像検査を受けてみましょう。
1. 血液検査
- CRP(C反応性タンパク)や赤血球沈降速度(ESR)が上昇(体内の炎症の指標)
- MMP-3(マトリックスメタロプロテイナーゼ-3)の上昇(関節や筋肉の炎症を反映)
- リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体は陰性になることが多い
2. 画像検査
- 超音波(エコー)やMRIで、筋肉や腱の炎症をチェック
「じゃあ、レントゲンを撮ればわかる?」
いいえ、レントゲンでは特に異常が見つからないことが多いんです。
どんな治療をするの?
リウマチ性多発筋痛症の治療は**ステロイド(プレドニゾロン)**が中心になります。
1. ステロイド治療(内服)
- プレドニゾロン 10〜20mg/日を開始
- 1〜2週間以内に劇的に改善することが多い
2. 免疫抑制剤の使用(必要時)
- メトトレキサート(MTX)がステロイドの補助として使われることもある
3. リハビリ・運動療法
- ストレッチや軽い運動で関節の動きを維持
放置するとどうなる?
治療しないままだと、痛みやこわばりがどんどんひどくなり、日常生活が困難になります。
さらに、5〜10%の患者さんは「側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)」を合併することがあります。
- 突然、視力が低下することも
- 失明のリスクがあるため、すぐに治療が必要
専門医からの一言


リウマチ性多発筋痛症は、年齢のせいかな?と見過ごされやすい病気です。
しかし、実際には免疫の異常が引き起こす炎症性疾患であり、正しく診断して適切な治療を始めれば、劇的に改善することができる病気です。
「年だから仕方ない」と我慢してしまう前に、一度ご相談ください。特に朝のこわばりや肩・腰のつらさが強くなってきたときは要注意です。
当院では、血液検査やエコーを用いた診察を通して、関節リウマチや他の病気との鑑別をしっかり行いながら治療方針を立てていきます。
必要があれば、膠原病専門医への紹介もおこなっています。 一緒に無理のない形で治療を進めていきましょう。
参考文献
- Dasgupta B, et al. “Polymyalgia Rheumatica and Giant Cell Arteritis.” Lancet, 2014.
- González-Gay MA, et al. “Epidemiology of Giant Cell Arteritis and Polymyalgia Rheumatica.” Arthritis Rheum, 2015.
- 日本リウマチ学会. リウマチ性多発筋痛症診療ガイドライン(2015)
この記事の監修者について
学歴・経歴
- 金沢医科大学 医学部卒業
- 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
- 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
- 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開
資格・専門領域
- 医学博士
- 日本整形外科学会認定専門医
- 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
- 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力
診療に対する想い
患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。 科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。 「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。
趣味・活動
- バレーボール歴20年以上
- ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)