「部活で走るたびにすねが痛い」「少し休むと良くなるけど、また痛くなる…」そんな症状ありませんか?
- ランニングやジャンプの練習のあと、すねの内側が痛む
- 押すとピンポイントではなく、広い範囲に痛みがある
- 運動を休むと症状が軽くなるけど、再開するとまた痛む
- 運動中にだんだん痛くなってきて、走り続けるのがつらくなる
このような症状がある場合、シンスプリントという運動によるオーバーユース障害の可能性があります。
特に、中高生の陸上部・バスケットボール・サッカー・ダンスなど、走る・跳ぶ動作が多い競技の選手に多く見られる障害です。
シンスプリントとは?
シンスプリントは正式には「脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)」と呼ばれます。
「shin(すね)+splint(副木=痛み)」という言葉の通り、すねの内側が繰り返しの運動で炎症を起こしてしまう状態です。
特に、すねの内側(脛骨の下3分の1あたり)に沿って痛みが出るのが特徴で、最初は運動のあとだけ痛む程度でも、悪化すると日常生活でも痛みを感じるようになることがあります。
なぜ起こるの?(原因)
シンスプリントは使いすぎによるスポーツ障害です。 何度も繰り返されるランニングやジャンプなどの動作で、すねの内側にある後脛骨筋・長趾屈筋・ヒラメ筋などが引っ張られ、その付着部に炎症が起こります。

主な原因は以下のようなものです:
- 急激に練習量が増えた(合宿や新学期の練習、中学進学や高校進学など)
- クッション性の低い靴で硬い地面を走り続けた
- もともと足の形(偏平足や回内足)があり、負担がかかりやすい
- 筋力不足や柔軟性の低下(特にふくらはぎや太ももの筋肉)
- 正しいランニングフォームが身についていない
特に「急に頑張り始めた時期」「フォームが安定しない初心者」に多く見られます。

どんな症状が出るの?
- すねの内側の下1/3あたりに痛み
- 押すと「広い範囲」に痛みがある(ピンポイントではない)
- 運動後に痛む→運動中も痛む→日常生活でも痛むと悪化していく
どんな検査をするの?
1. 身体診察
どんな動作や運動で痛みが出現するか、痛みの部位や関節の動き、足の形などを評価します。
2. 画像検査
- レントゲン:骨折や骨の変形がないか確認します
- 超音波検査:骨膜の腫れや炎症所見を確認します
- MRI(必要に応じて):疲労骨折との鑑別に有効です
どうやって治すの?(治療)
基本は「しっかり休んで回復させる」ことで治る病気です。
運動制限
痛みがある間は無理をせず、一時的に運動を中止または制限します。
回復とともに段階的にトレーニングに復帰していくことが大切です。
冷却・アイシング
運動後や痛みが強い時は、患部を10〜15分冷やすことで炎症を抑えます。
ストレッチとリハビリ
ふくらはぎ(ヒラメ筋、腓腹筋)や太ももの前後の筋肉の柔軟性を高めるストレッチを中心に行います。
インソール・靴の見直し
足アーチの崩れがある(扁平足や回内足)方は、足底筋のトレーニングやインソール調整も有効です。適切なシューズを選ぶことも、再発予防に重要です。
薬物療法
強い炎症がある場合には、消炎鎮痛剤(内服や湿布)を併用することもあります。
シンスプリントの復帰の目安
シンスプリントになった場合は無理をせず、身体の状態を見ながら段階的に回復を目指すことが大切です。
運動中は問題なくても運動後に痛みが出る場合には、運動量を調整しながら、ストレッチやアイシングを取り入れてケアを行い様子をみます。
運動中に痛みが出る場合は足が休んでほしいと訴えているサインです。
特に歩くだけでも痛みがあるような時期には、運動を中止し安静にして炎症を抑えることを優先しましょう。痛みを我慢して運動を続けると、症状が長引いたり再発のリスクが高まるため注意が必要です。
スポーツ復帰のタイミングは、痛みが落ち着くのを待って、ウォーキングなどの軽い運動から徐々に再開し、それでも痛みが出なければランニングに進むというステップを踏むのが理想です。
症状の程度によって復帰までの期間は異なりますが、軽症であれば2週間ほど、重症の場合は2~3か月かかることもあります。焦らず、自分の体と相談しながら少しずつ運動を再開し、再発を防ぎましょう。
専門医からの一言


シンスプリントは、いつも頑張っている学生さんや市民ランナーにとってとても身近なスポーツ障害です。
「我慢すれば走れるから…」と無理を続けてしまうと、疲労骨折に進行してしまうこともあるため、注意が必要です。
大事なのは、無理をしないこと、そして正しい治し方と予防策を知ることです。
「ちょっと痛いけど、そのまま練習を続けていいのかな?」と迷ったら、早めにご相談くださいね。
参考文献
- 日本整形外科学会. 成長期スポーツ障害 診療ガイドライン 2021
- Moen MH, et al. The treatment of medial tibial stress syndrome in athletes: a randomized clinical trial. Scand J Med Sci Sports. 2012.
- Newman P, et al. A prospective study of medial tibial stress syndrome in distance runners. Br J Sports Med. 2013.
この記事の監修者について
学歴・経歴
- 金沢医科大学 医学部卒業
- 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
- 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
- 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開
資格・専門領域
- 医学博士
- 日本整形外科学会認定専門医
- 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
- 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力
診療に対する想い
患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。 科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。 「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。
趣味・活動
- バレーボール歴20年以上
- ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)