寝違え(急性疼痛性頚部拘縮)とは?—朝起きたら首が動かない!

「朝起きたら首が痛くて動かせない…これって寝違え?」

  • 朝起きたとき、首が痛くて動かせない
  • 首を動かすと強い痛みが走る
  • 無理に動かそうとすると、さらに痛みが悪化する
  • 痛みが首だけでなく、肩や背中にまで広がることがある

このような症状がある場合、**寝違え(急性疼痛性頚部拘縮)**の可能性があります。寝違えとは、睡眠中の不自然な姿勢や筋肉の過度な緊張により、首や肩周りの筋肉や靭帯に炎症が生じ、急激な痛みと可動域の制限が起こる状態を指します。

首や肩周りには僧帽筋(そうぼうきん)や胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)、頭板状筋(とうばんじょうきん)など、姿勢を保つための重要な筋肉が複雑に存在しています。

寝ている間に無理な姿勢が続いたり、枕の高さが合わないことでこれらの筋肉が過緊張を起こすと、筋肉や筋膜に炎症が生じ、寝違えとして痛みや可動域制限を引き起こすのです。

多くの場合、数日で自然に改善しますが、症状が強い場合や長引く場合は、適切な対処が必要になります。

なぜ寝違えが起こるのか?(原因)

1. 不自然な姿勢での睡眠

  • 枕の高さが合っていない
  • 寝返りが少なく、首が偏った状態で長時間固定されている
  • ソファやデスクで首を曲げたまま寝てしまう

首が不自然な角度のまま長時間固定されると、筋肉が緊張し続け、血流が悪化します。その状態で急に首を動かすと、筋肉や靭帯が傷つき、炎症が起こることで痛みが生じます。

2. 首や肩の筋肉の疲労や過緊張

  • デスクワークやスマホの使用で首・肩の筋肉が硬くなっている
  • 運動不足で首や肩の柔軟性が低下している

日常的に首や肩の筋肉が硬くなっていると、血流が悪化し、寝ている間に炎症が起こりやすくなるため、寝違えのリスクが高くなります。

3. 頚椎や関節の炎症

  • 以前から肩こりや首のこりが強い
  • 頚椎症や椎間板ヘルニアがある
  • 寝違えを繰り返す

慢性的な首のこりや、頚椎に変形がある場合、寝違えが起こりやすくなることがあります。痛みが強い場合や長引く場合は、頚椎の異常が関係している可能性も考えられます。

寝違えの症状

  • 首を動かすと鋭い痛みが走る
  • 痛みのため、首を一定の方向に動かせない
  • 肩や背中にまで広がる痛みがある
  • 安静時には痛みが軽減するが、動かすと悪化する

通常、炎症が落ち着くにつれて痛みは改善し、1週間ほどで自然に回復することがほとんどです。

しかし、痛みが強く、首の可動域が大きく制限される場合や、しびれがある場合は、頚椎の異常が関係している可能性もあるため、注意が必要です。

どうやって診断するのか?

寝違えは、症状と身体診察で診断することが多いですが、他の疾患が関与していないかを確認するために、以下のような検査を行うことがあります。

1. 身体診察

症状が神経によるものなのかその他の原因によるものなのかを判断します。
痛みやしびれの範囲、筋力低下、巧緻運動障害の有無、歩行のバランスを評価します。

2. 画像検査(レントゲン・MRI)

  • レントゲン:頚椎の変形(骨棘という骨の変形やストレートネックなど)がないか確認します

症状が長引く場合や、しびれ・神経症状がある場合は、頚椎症や神経の圧迫を確認するために検査を行うことがあります。

どのように治療するのか?

1. 無理に動かさず安静を保つ

痛みが強いときに、無理に首を動かすと炎症が悪化する可能性があります。首を固定し、痛みが落ち着くまで無理な動きを避けることが大切です。

2. 冷やす or 温める(タイミングによって使い分け)

炎症が強い段階では冷やし、痛みが落ち着いてきたら温めて血流を良くするのが効果的です。

3. 鎮痛剤の内服や湿布の使用

痛みが日常生活に影響を与える場合は、一時的に鎮痛剤を使用しながら、炎症が治まるのを待つこともよくあります。

4. 軽いストレッチやマッサージ(痛みが落ち着いてから)

急性期はストレッチやマッサージを避け、痛みが落ち着いたら少しずつ首を動かした方がいいと考えます。できる範囲で肩や首をゆっくり回したり、ストレッチを行い、筋肉をほぐします。

痛みが完全に取れる前に無理にマッサージをすると、炎症が悪化することがあるため、注意が必要です。

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

寝違えは、多くの人が経験する首の痛みですが、姿勢や筋肉の状態が大きく影響するため、予防が大切です。

普段から適切な枕を使い、寝返りが打ちやすい環境を整えることが、寝違えを防ぐポイントになります。

また、日中のストレッチや運動を取り入れることで、首や肩の柔軟性を保ち、筋肉の緊張を和らげることができます。

多くの場合は自然に回復しますが、痛みが長引いたり、しびれが伴う場合は、頚椎の病気が関係している可能性もあるため、早めの受診をおすすめします。

参考文献

  • Chaibi A, Stavem K, Russell MB. Spinal Manipulative Therapy for Acute Neck Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomised Controlled Trials. J Clin Med. 2021;10(21):5011
  • 鈴木 健一, 山田 真一, 高橋 直樹. 急性頸部痛患者に対する温熱療法の即時効果. 日本温泉気候物理医学会雑誌.2019;82(3):201–208.
  • 佐藤 和正, 田中 宏太郎, 松本 俊夫. 頸部痛に対する理学療法の効果:システマティックレビュー. 理学療法学.2020;47(2):123–134.

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)