ぎっくり腰とは?—「突然の腰の激痛…」 それ、急性腰痛症かも?

「急に腰が痛くなって動けない…ぎっくり腰って一体何?」

  • 重いものを持ち上げたときに腰に強い痛みが走った
  • 腰をひねった瞬間に痛みで動けなくなった
  • 前かがみになると痛みが悪化する
  • 横になると少し楽になるが、立ち上がるのがつらい
  • 数日経っても痛みが引かない、または悪化している

このような症状がある場合、ぎっくり腰(急性腰痛症)の可能性があります。ぎっくり腰は、突然発症する腰の強い痛みを伴う状態で、動くことが難しくなることもあります。

発症直後の痛みは強烈ですが、適切な対処をすれば数日から数週間で改善することが多いのが特徴です。

しかし、ぎっくり腰を繰り返すと、慢性的な腰痛につながることもあるため、再発予防が重要です。

ぎっくり腰とは?

ぎっくり腰(ぎっくりごし)は、突然発症する激しい腰痛の総称です。医学的には急性腰痛症と呼ばれます。特定の疾患をさすものではなく腰が痛くなる様々な状態の総称と考えてもらえればいいと思います。

古くは「魔女の一撃」とも呼ばれ、重い物を持ち上げたとき、体をひねったとき、くしゃみをしたときなどに突然発症することが特徴です。

急性腰痛症とは?

急性腰痛症とは、腰周辺の筋肉や靭帯、関節に急激な負荷がかかり、炎症が生じることで発生する腰の痛みを指します。

特に、日常生活の中での無理な動作や不自然な姿勢の継続、長時間のデスクワークなどが原因となることが多いです。

  • 腰周囲の組織に急なストレスがかかる
  • 筋肉や靭帯の炎症が生じ、痛みが発生する
  • 動くと痛みが強くなるが、安静にすると軽減する

多くのケースでは、1週間〜2週間ほどで痛みが軽減し、1ヶ月程度で回復することが多いですが、適切な対処をしないと、痛みが慢性化することもあります。

なぜ急性腰痛症が起こるのか?

1. 椎間板の損傷(椎間板性腰痛)

  • 長時間の座り姿勢や急な動作で椎間板に負担がかかる
  • 椎間板の中の髄核が圧力で突出し、痛みが発生する

椎間板は背骨のクッションの役割をしていますが、加齢とともに椎間板は痛みやすくなり、椎間板のクッション性が低下します。その結果、椎間板の内圧が高くなり腰痛が出現します。

この場合、腰椎椎間板ヘルニアの初期症状として急性腰痛が現れることもあるため、注意が必要です。

2. 関節の炎症(関節性腰痛)

  • 普段から無理な姿勢で仕事をすることが多い
  • 過度な筋トレで腰に負担をかけている

腰の関節(椎間関節)や骨盤にある仙腸関節にストレスがかかると、炎症が生じ、痛みが発生します。

特に、長時間の座位や不自然な姿勢の継続によって腰椎椎間関節や仙腸関節に負担が蓄積し姿勢が悪くなっていると、急な負荷で腰痛を引き起こす原因となります。

また、大きな筋肉(アウターマッスル)のみを鍛えることで腰椎や骨盤へ無理な力がかかってしまい腰痛が出現することがあります。

3. 腰の筋肉や靭帯の炎症(筋筋膜性腰痛)

  • 重いものを持ち上げたときに腰に強い負担がかかった
  • 急な動きやひねり動作によって筋肉や靭帯が損傷してしまった

腰の筋肉や靭帯に過度な負担がかかると、筋組織や靭帯組織内に損傷が生じ、炎症を引き起こします。これが急性腰痛症の最も一般的な原因です。

特に筋力が低下している人や、運動不足の人では発症しやすいと考えられます。また、筋肉の柔軟性が低下していると、正しい姿勢を保ちにくくなり、無理な動きや偏った力のかかり方が腰に負担をかけ、痛みの引き金となることもあります。

急性腰痛症の検査

1. 画像検査(レントゲン・MRI)

  • レントゲン(X線):骨折や大きな異常がないかを確認
  • MRI:椎間板や神経の状態を詳しく調べ、ヘルニアや神経障害の有無を確認(必要に応じて)

2. 身体診察(徒手検査)

筋力低下や痛みの部位、神経痛の有無などを評価します

急性腰痛症の治療

1. 安静と適度な運動

急性腰痛症になった直後は、無理に動かず痛みが落ち着くまで安静にすることが重要ですが、長期間の安静は筋力低下の低下を招くので、むしろ逆効果になることもあります。

痛みが強い間は鎮痛剤や痛み止めの注射を併用し痛みを緩和することも珍しくありません。

その後、痛みが和らいできたら、少しずつ日常生活の動作を取り入れ、適度に体を動かすことが大切です。

2. 冷却・温熱療法

  • 発症直後(24〜48時間以内):アイシング(冷却)で炎症を抑える
  • 痛みが落ち着いたら、温めて血流を良くし、回復を促す

3. リハビリ・ストレッチ

  • 腰周りの筋肉をほぐすストレッチを行う
  • 体幹トレーニング(腹筋・背筋)を行い、腰への負担を軽減

疼痛が改善しても再発することが多いのも急性腰痛症の特徴です。リハビリやストレッチを定期的に行うことで予防していくことが大切です。

専門医からの一言


ササモト整形外科 副院長佐々本 丈嗣

急性腰痛症(ぎっくり腰)は突然の痛みで動けなくなることが多いですが、適切な処置をすれば数日から数週間で回復することがほとんどです。

しかし、ぎっくり腰を繰り返すと慢性的な腰痛につながることもあるため、再発予防が重要です。「治ったから大丈夫」と油断せず、日常生活の姿勢を見直したり、適度なストレッチや筋力トレーニングを取り入れたりすることで、再発を防ぐことができます。

腰痛を繰り返している方は、早めに専門医に相談し、適切な治療と予防を心がけましょう!

参考文献

  • Steffens D, Maher CG, Pereira LS, et al. “Prevention of Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-analysis.” JAMA Intern Med. 2016;176(2):199-208.
  • Oliveira CB, Maher CG, Pinto RZ, et al. “Clinical practice guidelines for the management of non-specific low back pain in primary care: an updated overview.” Eur Spine J. 2018;27(11):2791-2803.

この記事の監修者について

ササモト整形外科 副院長
ささもと佐々本
たけし丈嗣

学歴・経歴

  • 金沢医科大学 医学部卒業
  • 金沢医科大学大学院 医学研究科(運動機能形態学専攻)修了、医学博士号取得
  • 大学病院で運動器疾患・最先端の手術技術を学びながら、穴水総合病院、氷見市民病院など北陸地方で地域医療に従事
  • 2025年より兵庫県高砂市にて地域に根差した医療を目指し、整形外科診療を展開

資格・専門領域

  • 医学博士
  • 日本整形外科学会認定専門医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
  • 超音波を用いた診療、肩・膝関節疾患、脊椎疾患、骨粗鬆症、地域医療に注力

診療に対する想い

患者さん一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、丁寧な診察とわかりやすい説明を心がけています。
科学的根拠に基づいた最適な医療を提供しながら、心の通った温かいサポートを大切にしています。
「みんなの笑顔をつなぐ医療」を実現するため、地域の皆さまに寄り添い、これからも日々努力を重ねてまいります。

趣味・活動

  • バレーボール歴20年以上
  • ランニング、マラソン挑戦中(神戸マラソン2025年出場予定)